タイの鶏唐揚げ５ラインに
ニチレイＦ、日産40ｔ能力に拡大
ニチレイフーズはタイ子会社のスラポンニチレイ食品（ＳＵＮＩＦ）第３カビンブリ工場の鶏唐揚げラインを２ライン増設し、全５ラインとして生産能力を大幅に増強し、４日から本格稼働を開始した。
97年にチキン専用工場として操業開始。これまでの３ラインに昨年11月１ライン増設。今回１ラインをさらに増設し全５ラインとした。これにより８時間の定時生産で日産24ｔ、一部２直など時間延長を取り入れることで日産40ｔ能力まで可能となった。
凍結装置にはスパイラルフリーザー２台を導入した。
新ラインはフライヤー２台をつなぐ“ダブルフライ”。２度揚げすることで鶏肉の外側をカリッとし、中はジューシーに仕上げる同社独特の製法。
原料はタイの有力鶏肉パッカー３社から毎日新鮮な生肉の供給を受けている。今回のライン増設に伴い鶏原料は従来の五割増の35ｔを毎日搬入する。一時保管のためチルドルームも拡張した。
カット済みの鶏生肉を搬入し、一切れずつ検品したのち、調味料を加えてタンブリングマシンで味を浸透させる。あとは一切れずつ手作業でフライヤーに投入する。
原料価格、労賃の上昇が懸念材料
スラポンニチレイ第３カビンブリ工場が何よりも力を入れているのは安全管理。
(1)原料生産者はタイ政府畜産局（ＤＬＤ）へ養鶏農場番号、生育記録などを報告
(2)パッカー（原料加工業者）は同工場が求めるサイズ、重量などの切り身に加工して納入。これにはトレース（履歴追跡）可能な情報番号が打たれている
(3)カビンブリ工場で最終加工後の加工記録もＤＬＤに報告する。ＤＬＤから確認情報が入るまで出荷はできない。ＤＬＤを中心に原料から製品までの全記録が保管され、何か問題が起きればトレースが可能となる。こうしたタイ政府が指導する安全安心対策への信頼度はきわめて高い。
問題はコスト高が進行していること。
タイでも人件費は年々上昇、現在の政府最低賃金は170バーツ／日（１バーツは約3.3円）だが、カビンブリではさらに高い水準。しかも求人難のため、遠いところでは100kmの遠隔地から通勤する従業員もいるという。
鶏原料も年初から上昇を続けており、年初比五割高となっている。中国の鶏製品が供給不全に陥っているため、供給先をタイへシフトするユーザーが急増している。しかし、タイでも良質な原料の安定調達やコスト高への対応、労働者の確保など課題は山積みの状態だ。
杉野正幸ＳＵＮＩＦ副社長兼カビンブリ工場長は「ここは手作りを中心にする最後の大型工場といえる。省力化を進めつつも手作りのよさを追求し、付加価値を創造する。日本市場が求める高度な消費者ニーズに応えていきたい」と意気込んでいる。
ＳＵＮＩＦカビンブリ第３工場