天狗缶詰 三河工場<4>

業務用中心こそ、市販ブランドも輝く

 缶詰メーカーは原料価格の高騰と資材関係が軒並みアップしているため、押しなべて厳しい事業環境となっているが、業務用缶詰を主体とする天狗缶詰(愛知県名古屋市、伊藤嘉彦社長)が安定した業績を維持しているのは、話題性の高い「おでん缶」などの市販用缶詰を取り扱っていることが大きな要因となっている。

 20年以上も前に「うずらの卵が余った時の苦肉の策」として同社が「おでん缶」を商品化した。その後も細々と販売を続けてきたが、数年前に東京・秋葉原の電気街にある自動販売機にこの商品を入れたところ、オタク族の間で人気に火がつき、テレビ・映画の「電車男」で全国区の商品になった。

 最近は「静岡おでん」など様々なおでん缶詰がかなり出回っているが、このブームの火付け役となったのは“こてんぐ”印のおでん缶にほかならない。
 このほか、「ラーメン缶」、「パスタ缶」、「カレーうどん缶」も商品化しており、最近は麺類缶詰の人気が高まっている。

 ただ、こうしたブームに紛動されず、あくまで業務用主体の姿勢を貫くあたりが天狗缶詰らしいところ。伊藤社長は「おでん缶人気はもちろん、市販用缶詰の人気はあくまで一過性と考えなくてはいけない。ウズラ卵や鶏卵、グリンピースやマッシュルーム缶など本業の業務用でしっかり収益を上げることが大切で、いつまでも“こてんぐ”に甘えてはいられない」と社内で徹底している。

 業務用の世界で認められた確かな技術をもとに、シャレや楽しさを加味した市販用缶詰も作る。業務用を主体に確かな信頼を得ているからこそ、“こてんぐ”印も一層輝いて見えるというものだ。                         (シリーズ終わり、井出)