自社比率95%、今後は他社との連携で成長を
 ――ヤヨイ食品(株) 取締役生産本部長 小野寺明博氏

 業務用冷凍食品専業メーカーのヤヨイ食品で、藤嶋照夫社長体制になった昨年から生産本部長を務める。生産畑出身の藤嶋社長は生産ラインのカンパニー制をはじめ、「選択と集中」、「拡大なき成長」などの方針を打ち出しているが、工場を新設せずにどのように成長していくのか、生産部門の方針を聞いた。

生産体制の現状は?

       小野寺取締役

 「当社は海外生産が少ない。国内は3工場、海外は中国の青島に青島雅優益有限公司がありますが、今年は天洋食品事件もあって、青島雅優益食品の生産高は昨年比四割減です。一方、自社比率は当社の管理基準に基づく協力工場を含め95%、他社や中国からの製品は5%です。今期の国内生産は10%の上乗せを計画しています」。

コストアップが続いているが

 「昨年から今年にかけて当社の原材料費は大幅に増える計算になります。小麦粉の秋の値上げは当初より抑えられるようですが、これも若干であり、大した幅ではありません。一番苦労しているのが畜肉と加工品。牛肉はオーストラリアにロシアの買いが入って供給がタイトになっています。加工品原料は何千種類もあり、その値上がり幅も半期で億単位になります。原料の値上がりを率で換算すると約10〜15%増。エネルギーも約10%増です。使用量を抑える努力をしていますが、相当のコストUPになります」。

コスト対策は?

 「生産性の改善に努力をしていますが、なかなか思うようになりません。設備投資を抑え、既存設備の能力範囲内で生産していますから、国内3工場の操業率は上がっています。ですから『原料が下がれば……』、と思いますが、そううまくはいきません。やはり、今秋に予定する製品価格の値上げが大きなポイントになるでしょう。昨年実施した値上げは原料の値上がりに対して少し不足していました。営業は値上げをする経験が過去にないので、なかなか浸透しにくかったこともあります」。

設備投資は控えると?

 「“拡大なき成長”というのは、工場を新たに作らないという意味です。既存の設備更新は必要です。生産コスト削減は省人化の設備を入れるしかないと思っています。また、当社は300億円規模だからその規模の安全管理でいいというわけにもいきません。伊藤忠グループの一員としてふさわしい安全管理も必要ですから、そのための設備投資も必要です。エネルギーコストについては、これまでコージェネレーションなどを導入してきました。しかし、重油が高騰しているので、今は買電が主になっており、さらにこの部分を削減するための装置を導入したところです。電力削減については、コンサルタントを各工場に派遣しており、その効果も出てきています」。

 「原料コストの値上がりに対しては、原材料の置き換えと単価を抑えるしかありません。伊藤忠商事の支援を受け、調達に際しては同社と相談して国内外から探してくることもしています。水産原料の確保は厳しい状況ですが、海外の養殖場などは確実に安全の担保が取れる所を開発しています。それが当社の優位性の一つです」。

サンマルコとの提携のメリットは?

 「昨年からOEM生産をしていただいていましたが、さらに強固な関係になろうということ。北海道にあるサンマルコは原料産地に近い所で生産しているのがいいところで、当社の調達にもいい影響を与えています。さらに、サンマルコが吸収した旧日本冷食は中華系などの商品も作れ、当社が持っていない商品があります。コロッケについても、お互いに生産していないタイプの商品がありますから、売れる商品の幅が広がります。競合する部分もありますが、末端で調整していけばいい」。

他社との連携で伸ばしていくと?

 「 今は“オーバーカンパニー”傾向にあると思われるので、生産設備が空いているところもあると考えられます。現在も国内に10社、海外に7社の委託先があります。全て当社の安全管理を担保できるところです。それでも自社比率は95%と高いので、これから400億、500億円と拡大していく上で委託は必要です。他社はこれまで委託比率が高かったので自社比率を高めようとしていますが、当社は既に自社比率が高いので、今後はいかにシナジー効果を出していくかがポイントになるでしょう」。


(おのでら・あきひろ)1980年6月の入社以来気仙沼工場勤務を続け、2005年4月気仙沼工場長に。06年4月から執行役員生産本部長補佐を兼務。07年4月生産本部長。同年7月取締役に昇格し、生産本部長兼青島雅優益食品有限公司董事長を務めている。1955年8月3日生まれ、53歳。