初の冷食専用、基幹工場に育てる
トオカツフーズ 山北工場��
トオカツフーズで初となる冷凍食品専用の山北工場が稼働して、２月で１年になる。自社ブランドの冷凍惣菜のほか、麺、パスタ、ソース類の基幹工場として成長を続けている。生産設備に対するこだわりが随所に見受けられる。
山北工場の外観
神奈川県足柄郡山北町。丹沢山系の麓に工場は立地しており、酒匂川が近くを流れ、丹沢水系の豊富な天然水に恵まれている。厚生棟や検査用は町上水だが、製造用などそれ以外は井戸水を使用している。
同社の都筑工場（旧川和工場、横浜市都筑区）と関連会社の富士食品（東京都足立区）の冷食事業を統合する形で立ち上がった。２工場とも冷食のほか、日配品も扱っていたが、山北工場はグループ初の本格的な冷食専用生産拠点となる。しかも生産能力は２工場を統合した規模を上回っており、存在感のあるシンボルとして育てたいと意気込んでいる。
河野工場長
シンボルを最大限に活かすためにはスタッフの確保が欠かせない。当初、スタッフが集まるかどうかが懸念だったが、200名の定員に600名の応募があったという。そのうち地元山北からは70名を採用、近隣の小田原市や大雄山線沿線からも採用し地域雇用の創出につなげている。
集まった人員のほとんどが食品工場の未経験者。ユニフォームの着こなしや食品機械、包装機械のオペレーションは初めてで、一連の作業を修得するまで時間を必要としていた。スタッフが作業に慣れてきた夏頃から、軌道に乗っている。
この点では、同時期に稼働した横浜鶴見工場（横浜市鶴見区）と大きく異なる。横浜鶴見工場は食品製造と配送機能を備えた総合センターだが、立ち上げに近隣の横浜センター（横浜市港北区）や尻手工場（横浜市鶴見区）から七割強のスタッフが集まった。これに対し「山北工場はゼロからのスタート。オープン前の年末年始は準備に追われてバタバタしていた。しかし、その経験があるから今がある。スタッフも未経験者がほとんどだったが、みんな目標意識が高く、今では頼れる存在になっている」と河野孝司工場長は喜びを示す。
未経験からのスタートだったが、軌道に乗った
製麺など、機械にこだわり
富士食品が大手冷食メーカーの麺製品のＯＥＭ工場だったため、山北工場でもその機能を受け継いでおり、製麺ラインを内製化している。
こだわりを譲れない製麺機（蒸し麺用）
工場新設にともない、ほとんど全てのラインの機械を新たに導入したが、唯一の例外はこの製麺機。富士食品から移設した。蒸し麺用と茹で麺用の製麺機をそれぞれ１基ずつ備えている。「この製麺機には長年のノウハウが詰まっている。多少の調整の違いでも麺には大きな違いとなって現れる。ＯＥＭ元にもこの完成度の高さを理解してもらっている」と河野工場長は語る。
ブリクサー
同工場の食品機械に対するこだわりはまだある。
自社ブランド「おまかせ健康三彩」は「温めるだけで栄養バランスが整った食事」をコンセプトに宅配やネット通販で展開している冷凍アソートセット。栄養管理士が栄養素をバランスよく整えた献立を、塩分の高低や辛み、旨みでメリハリをつけて味付けている。
調理済みの料理を高品質のまま保存するため、特殊製法の密着フィルムで閉じ込めている。おかずごとに独立密閉しているので、味や香りなどが加熱時に混ざることはない。
スタートから６年ほど経つが、高齢者向けなどに需要を年々伸ばしている。今後もさらに拡大して主力商品に育てたいと考えており、新工場はその重要な生産拠点となる。
この密着フィルム包装には精度の高いドイツ製の深絞り包装機を導入。海外製は緊急時などでメンテナンス体制が万全かどうかが懸念となるが、このメーカーは日本代理店がしっかりしていると判断し、期待を込めて導入に踏み切った。
「Ｓｏｕｐ菜園」も同じ。にんじんやかぼちゃ、キャベツなど１種類の野菜だけを使用し、素材の良さを充分に引き出したスープで高齢者のほか、栄養が不足がちな若い世代や単身者向けに需要を高めている。こちらはフランス製のブリクサー（高速ミキサー）を導入した。「精度が高くイメージ通りのスープに仕上がる。メンテナンスもしっかりしているので安心して生産できる」（河野工場長）という。