設備投資相次ぐ、更新はなお途上
ハナマルキ 大利根工場(2)

 ハナマルキの大利根工場は即席みそ汁の新ラインやコージェネレーションシステムを導入するなど設備投資が今年相次いでいる。隣接地に立ち上げた物流センターも有効活用するなど生産量増大を支えている。引き続き設備の更新を検討している。

導入したコージェネレーションシステム

 自社内で発電できるコージェネレーションシステムを導入し、今年6月から稼働している。3年前に重油から天然ガスに燃料転換が済んでおり、このシステムにより工場稼働時最大電力の41%を確保し、発電に伴う熱エネルギーを蒸気として使用している。
また、エネルギーを効率的に利用できるため工場から排出するCO2も30t削減できると見込んでいる。
 コージェネレーションの導入に踏み切ったのは、昨年震災による計画停電で苦い経験を余儀なくされたためだった。
 3月11日金曜日、地震が発生。即席みそ汁など加工食品の充填ラインは翌週月曜日から再開できたものの、その根本となる味噌の仕込棟の復旧には時間を要した。地震直後に機械が停止したため、ライン上に残った原料をすべて取り除き、洗浄しなければならなかった。それに要した時間が1週間、そうこうしているうちに計画停電が始まった。

    大久保工場長

 麹をつくる自動製麹装置は、麹菌が自家発熱して自滅しないように、温度を抑える風を2日間送り続けなければならない。そのため、3時間ほどの計画停電でも対象となった日は操業できなかった。
 「電力規制を受けたのを教訓に、工場側からコージェネレーションを導入してはどうかと提案した。すでに天然ガスに燃料転換していたことも導入の後押しとなった」と大久保尚行工場長は語る。もともとはコストを削減するために天然ガスに転換したものだったが、こういう形で結果を出すこととなった。「もちろん環境負荷も低減できる」(大久保工場長)。
 同社は伊那工場(長野県伊那市)でも今年夏から天然ガスにエネルギー転換しており、将来的には同工場でもガスコージェネレーションの導入を視野に入れている。

 震災を機に、即席みそ汁は利便性が高いとして需要が増えている。これに対応するため大利根工場では5億円を投じて即席みそ汁の新ラインを6月に導入した。最大4万3200食/時(最大720食/分)の充填能力を持つ。調味スープと具材を個食充填し、袋詰めから箱詰めまでを全自動化させた。

効率向上に寄与する物流センター

 伸長している即席みそ汁。それを下支えしているのは物流システムの改革だろう。2010年3月、工場に隣接する広大な用地を取得し、同年6月に配送センターとして稼働させた。
 以前までは、近隣の館林市にある倉庫を間借りして配送センターとしていたが、手間も費用もかかる。「震災後の生産量を考えると、いい土地を、いいタイミングで取得できたと実感している。センターを見ていただいた取引先にも“これなら安心できる”と納得していただいている」という。

 施設の更新はまだ途上にある。同社は隣接地を取得した2010年から10年越しで大利根工場の更新を計画している。米と大豆を保管するサイロはそれぞれ4本ずつ構えているが、いずれはサイロの数を増やしたいという。「緊急事態で入ってこなくなるリスクを考慮しておかなければならない。大豆がなければ工場は何もできない。震災の苦い経験を教訓に、食品メーカーの供給責務を改めて痛感した」としている。
 また、稼働開始から来年で40年を迎える同工場。その後の更新は増築に増築を重ねたものだった。「動線の確保が今後の課題」として、既存設備に手を加える箇所を割り出して対応を進めている。

主力のカップ詰め味噌ライン(750g)

小分けタイプの「生即」ライン