日本冷凍食品検査協会
現場でつくりこむ「食の安全・安心」 実践のポイント −１−
はじめに
現在、食品関連の企業が抱えている大きな課題は、社会環境の急激な変化への対応と消費者から失われた「食の安全・安心」に関わる信頼回復と言えるでしょう。
「食の安全・安心」に関わる課題は、冷凍野菜の農薬の残留やうなぎの動物用医薬品の残存などの直接的に食の安全に関わる問題から、｢中国の冷凍餃子｣のような刑事的な事件、さらには「うなぎの産地偽装」や「菓子の賞味期限の改ざん」などのコンプライアンスに関わる事件など、本来の「食の安全・安心」とは異なる方向に展開しつつあります。
多くの食品の製造・流通に携わる企業では、「食の安全･安心」を確保するために真剣に取り組んでおり、「事故」と「事件」ではその背景にある原因が異なることを明確に区分して論議する必要があるものと認識しています。
しかしながら、消費者にとっては「事故」であれ「事件」であれ、「食の安全・安心に関しては同じこと」という認識があり、なかなか「事故」と「事件」を区分して消費者に訴えることは、困難な状況にあります。
これらの課題を解決するためには、食品の製造･流通に携わる企業が、まずは｢食の安全｣をしっかり確保し、その無事故と言う実績の基に｢安心｣という消費者との信頼関係を取り戻すことが、最も重要ではないでしょうか。
このような状況の中で、（財）日本冷凍食品検査協会では、｢安全な食品｣を消費者に提供するために必要とするいろいろな支援（食品の試験分析、製造･流通過程の検査および改善のためのコンサルティング支援）を食品の製造や流通に携わる企業の方々へ行なってまいりましたが、これらの支援を更に強化するために、この度、水産タイムズ社と連携して「安全な食品を提供するための技術情報の提供」を、このＷｅｂによる情報発信ＦＥＮ上で行なうことにいたしました。
提供する技術情報は、「現場でつくりこむ『食の安全・安心』 実践のポイント」とシリーズ名を題して、製造現場ですぐに役立つ技術情報にするようにしたいと思っております。
具体的な掲載内容は、「掲載する予定のテーマ紹介」（後述）に掲載していますが、食品の安全確保のために規格化された食品安全マネジメント（ＩＳＯ22000）の考え方を基本にし、その実践に当たってのポイントについて事例等を入れながら分かりやすく紹介いたします。
また、掲載するテーマは、食品安全マネジメントのシステム構築に不可欠とされる「前提条件プログラム（ＰＲＰ）」である従業員、施設･設備、原材料の管理やその管理を機能的に推進する文書化による標準化の方法など、幅広く掲載する予定です。さらには、今後の社会的な変化に応じたトピックス的なことも、必要に応じて随時追加して掲載する予定です。
掲載は、毎週１回で約１年間を予定しておりますが、掲載中にも読者の皆様からご要望、ご意見を賜りながら、より役に立つ技術情報の提供に努める所存でございますので、よろしくお願い申し上げます。
平成21年７月１日
財団法人 日本冷凍食品検査協会 企画開発事業部
＜掲載する予定のテーマ紹介＞
第１章 食の安全を守るマネジメントシステム
・食の安全に関わる事故発生の現状
・ＩＳＯ22000の特徴とシステム構築のポイント
第２章 現場力を高める従業員の教育
・現場の要であるキーパーソンの育成方法
・効果を上げるパートタイマーへのトレーニング法
第３章 現場で活用できる文書とは？
・活用される作業手順書の作り方
・使いやすいチェックシートの作り方
・機能的な文書の体系的整備の仕方
第４章 安全と品質の決め手となる原材料の管理
・原材料の受入管理
・原材料納入業者の指導方法
第５章 クレーム削減のための異物対策
・重要管理点（ＣＣＰ）となる金検・X線異物検出機の管理
・効果的な防虫対策
・簡単にできる異物鑑定の簡易法
・ソフトを重視した毛髪混入防止対策
第６章 食中毒事故を防ぐための衛生管理
・正しい洗浄・殺菌の方法
・最近話題になっている食中毒菌（ノロウィルス、カンピロバクター、リステリア）
第７章 工程での標準化の進め方
・製造工程の管理で重要な標準化の方法
・製造工程における管理基準の設定
第８章 再発防止のための問題解決手法
・問題点の発見防止
・真の原因の見つけ方
第９章 コストを考えた施設・設備の管理
・施設、設備の管理のあり方
・大きなコストを掛けない施設、設備の維持管理と改善
第10章 食品事故を未然に防止するリスクマネジメントとは？
・リスクマネジメントの基本的な考え方
・効果を上げるリスクマネジメントの取り組みとは
第１章 食の安全を守るマネジメントシステム
１ 「食の安全・安心」の現状
（１）商品回収事故の発生状況
国民生活センターの調査によると、オープンリコール（社告を新聞などに掲載し、不特定多数の商品を回収する）は、2008年は153件となっています。
この調査結果の特徴的なのは、昨年発生した餃子事件や牛乳のメラミン混入事件、事故米等といった食品に関する事件の影響によるコンプライアンス違反による回収が約4割を占めていることも挙げられますが、「賞味期限の間違い」「ラベルの貼り間違い」など、作業のケアレスミスによる事故が１／４を占めていることです。
回収によってかかる費用は、規模にもよりますが多くの費用がかかると言われています。先日発生した某食肉メーカーの自主回収にいたっては、回収に関連する費用（回収、廃棄、広告費など）も含め３億円になると試算しています。（2008年10月27日 ロイター）
それにもかかわらず回収原因の１／４は、製造現場の作業者のケアレスミスによるものであることから、企業の規模や生産品目に限らず、多くの食品事業者で起こりうる事故であることを認識する必要があります。
＜当協会が開催する８月、９月のセミナーのご案内＞
注）オープンセミナーには、次の６つのコースがあります。(仙台は、10月以降に開催します)
☆品質管理基礎コース
★ＨＡＣＣＰによる衛生管理コース
△異物対策コース
■キーパーソン育成コース（1.5日×３回コース）
○表示基礎コース
◎表示実践コース（1.5日×２回コース）
詳しくは、こちら
（財）日本冷凍食品検査協会 企画開発事業部
担当：菊井、井上、山口、高橋
TEL：03-3438-1895 FAX：03-3438-2747 URL：http://www.jffic.or.jp