冷凍用薄膜包材の売れ行き好調
プラ削減と耐ピン両立が高評価

 グンゼが昨年発売した冷凍用の薄膜包装フィルム「ピュアラップ」シリーズが好調な売れ行きを見せている。食品メーカーや食肉卸、小売りに導入先が広がり、このほど流通最大手にも採用された。魚の切り身やカット肉、ブロック肉、惣菜などの冷凍真空パックで活躍しており、今年上期だけで出荷量は昨年比約10倍に伸びた。

 一般的なナイロンポリフィルムに比べて厚みを半分に抑え、プラスチック使用量を大幅に削減したことが環境意識の高いユーザー企業に響いた。耐ピンホール性や真空漏れしないシールの安定性も高く評価された。

 プラスチックカンパニー営業統括部の福井浩二氏は「お客様の多くは厚さ70〜80μm(0.07〜0.08mm)のナイロンポリを使っているが、当社の『ピュアラップFS35N』は厚さ35μm、『FS40N』は39μm。プラ使用量を50%以上削減できるため、既存品からの切り替えが進んでいる」と語る。

薄さ半分でも強度は3倍高い

 導入先ではフィルムのあまりの薄さに最初は強度を心配するが、過酷な冷凍環境下で商品の輸送テストを行うと一様に驚くという。一般的な無延伸のナイロンポリでは魚のカマや切り身に残った骨がフィルムを突き刺したり、輸送過程でフィルムが折れ曲がり、尖った先が長時間段ボールに擦られ続けたりすることでピンホールが発生する。

 FS35Nで真空包装した冷凍切り身。食品ロス削減の観点からこうした売場が増えている

 FS35N・40Nは押出機から共押出したチューブ状の樹脂を縦横に二軸延伸することで、ナイロン・接着樹脂・ポリエチレンの3層構造でも高い強度を確保できる。実際、無延伸のナイロンポリ70μmとの物性比較テストでは突き刺し強度が2〜3倍超高く、耐擦れ(引っかき)もケタ違いに強いことを示した。

 福井氏は「ナイロンとポリエチレンの共押出しは独自技術であり、二軸延伸まで行っているところは当社だけ。しかも樹脂に延伸を加えるとふつうは熱によって縮むが、これも独自技術で収縮を抑え、チューブフィルムでは従来難しかった三方袋を加工できるようにした」とオンリーワンの技術に胸を張る。三方袋は魚の切り身や寿司ネタの包材として引き合いが増えているという。

水産大手が導入、シール漏れ減少

 FS35N・40Nは魚や肉を詰めた後の熱溶着時のシール不良が少ないのも大きな特長で、フィルムにシワが寄ったり、折れ曲がったりしても「シール漏れ(真空漏れ)」を起こしにくい。厚みのあるフィルムはピンホールを防ぐ半面、シール漏れが起こりやすくなる。FS35N・40Nは薄膜で熱伝導率が高いため、しっかりと接着する。

 FS40Nの三方袋を導入した大手水産会社はそれまでシール漏れによる再包装の作業負担に悩んでいたが、FS40Nの導入後はシール漏れが大幅に減り、作用効率や歩留まり率が改善した。プラごみの廃棄量も減少した。

 食肉卸の大和食品(大阪府堺市)では真空包装機に数パック並べて包装している。従来は真空時間に60秒間を要していたが、FS35N導入後は45秒間に短縮した。工場の担当者は「大量にパックしているため、1パックあたりの作業時間が減って非常に助かっている」と導入効果を語る。

 グンゼはFS35N・40Nの販売好調を受けてラインナップの拡充を今後検討する。フィルムの厚みを変えた製品を揃えて選択肢の幅を広げ、市場をさらに掘り起こすねらい。冷凍輸送の課題解決とプラ削減にワンストップで対応できることを訴求していく。