野口正見の「5S活動による食品工場改善」
よりよい食品工場をつくる5S活動エピソード −4−
掃除は人を変える

 掃除の継続により雑草はだんだん少なくなり、汚れの部分も少なくなり、掃除に要する時間が短縮化していった。
 その結果、時間に余裕が出来て、汚れ、乱雑な所、設備破損箇所が気になりだし、言われなくても現場が自主的に対応処置をするようになった。植木の剪定、散在する小屋の在庫整理、生ごみ置き場の造成、近隣の掃除も自主的に率先して行動するようになった。
 また、不具合に気づく感性も磨かれてきた。今まではすることがなければ休憩していたが、各部の役職者、部長、役員が共同して掃除を実施し、掃除後の清々しい達成感を共有したことはその後の5S活動の全社的な取り組みの礎となった。全役職者の一体感は社内に好影響を及ぼし、部下も喜んで従い、全社一丸の企業風土が熟成されていった。
 さらに、掃除前と掃除後を写真に映し、記録として残した。これにより、敷地の清掃と整理の2Sが定着し、5Sの効果を従業員に実際に体感させることができた。
 生産部門だけでなく、総務・経理・営業などの事務所関係者も自主的に5Sの日をきめ、掃除・整理・整頓に取り組むようになった。週1回2時間であったが、不要書類などをたくさん廃棄した。事務所が整理・整頓され、清潔になったが、何より従業員、特に女子社員が明るくなった。お客様への応対も素早く、積極的になり、「変わったな」とお客様から褒めていただくようになった。
 5S活動を会社の方針として正規の時間を設け、組織を作り、人を配置した。特に社長自らが5S活動を実施して“変わるのだ”という覚悟を示したことが定着への大きな要因であった。