東京大学発のベンチャー、ウッドプラスチックテクノロジーが開発した「ウッドプラスチックパレット」がパレットレンタル業界大手の日本パレットプールに採用された。従来は食品工場や冷蔵倉庫などに直接売り出していたが、これを機に幅広い業種に働きかけていく。
原嶌社長
ウッドプラスチックテクノロジーは東京大学が開発したバイオマスプラスチックを原料に100%使用したパレットを世界で初めて実用化したパレットメーカー。バイオマスプラスチック(ウッドプラスチック)は木質バイオマスとプラスチックを複合化した素材で、環境に配慮し、剛性が高いのが特徴。原材料は製材工場で作られた木質ペレットとプラスチックのバージン品を使っている。
原嶌社長は「ウッドプラスチックは丈夫な点が特徴で、剛性が高く、たわみが少ない。私たちが外部機関に委託して行ったテストでは荷重1t、2000時間のクリープ試験でたわみがわずか1mmでした。自動倉庫にも十分使える強度です。この点を日本パレットプール社にも評価いただきました」と語る。
木質ペレットとプラスチックでできたエコなパレット
価格も金属製やプラスチック製に比べ安く提供できる
同社の設立は2008年2月。環境負荷の小さい新素材の将来性を高く評価され、東京大学エッジキャピタルなどのベンチャーキャピタルから出資を受けている。製材工場の副次生産物が有効に活用できれば、木材加工業は活性化し、林業全体の活性化・森林保護にもつながる。行政からの評価も高く、農林水産省の助成制度を利用して、岡山県津山市に2009年、ウッドプラスチックパレットを製造する工場を建設した。
昨年10月に、温室効果ガス算定の国際基準『GHGプロトコル』の『スコープ3』という新たな基準が策定された。従来は、企業の直接排出量とエネルギー起源の間接排出量までが算定範囲だったが、新たな基準では、サプライチェーン全体に算定範囲が拡がり、既に大手メーカーは、新基準での温暖化ガス排出量の算定に着手している。
「今後、サプライチェーンを担う物流業者にも、温暖化ガスの把握と削減を求めていくことになりそうです。当社のパレットを使えば、コストを増やさずに温暖化ガス排出対策が進められます」という。
同社は9月に開催される国際物流総合展に出展する。「省資源・CO2削減に貢献するウッドプラスチックパレット」と題するセミナーも開催。木製・プラスチック製が主流であったパレット業界で、普及が期待されるウッドプラスチックパレットの特徴や導入事例を発表する。
木製パレットのトゲやササクレの問題を解決するためにウッドプラスチックパレットに切り替えるユーザーのほか、石油製品の価格上昇が続いているためプラスチックパレットを使用していたユーザーが切り替える事例も多いという。
「新製品が市場に浸透するには時間がかかります。これまで冷凍倉庫業界中心に直接営業してきたため、他の業界ではほとんど名前も知られていない状態でした。パレットレンタル業大手の日本パレットプール社が採用したことで、レンタルで運用するユーザーのニーズにも対応できるようになりました。これをきかっけに幅広い業種に働きかけていきたいですね」。