帝人と日本下水道事業団はかねてから開発を進めていた生物処理による排水処理装置「MSABP」による省エネ型下水処理技術の有効性をこのほど実証した。従来方式に比べ、余剰汚泥発生量を80%以上削減できる。
「MSABP」は帝人が展開している排水処理装置で生物反応槽を多段に区切り、各曝気槽内に特殊繊維を用いた微生物担持体を配列。食物連鎖の場を生物反応槽内に構成させることにより、汚泥レス・省メンテナンス・省エネ・低コストなどを実現する。
今回のパイロット試験では、「MSABP」を使用することによるエネルギー消費量や余剰汚泥発生量を、従来の標準活性汚泥法との比較による評価、検討を進めた。その結果、従来の方法に比べて余剰汚泥発生量を80%以上削減できることを実証した。また、曝気槽に供給する空気の量をこれまで以上に抑える運転条件を確立した。これらにより、下水道処理場内のトータル消費エネルギーを最大10%程度、CO2発生量を最大15%程度削減することが可能となった。
今後、両社は今回の共同開発を1年間延長し、総汚泥発生量のさらなる削減と、それに伴うエネルギー消費量の20%以上削減を目標に、沈殿可能な浮遊物質を取り除く過程である最初沈殿池に流れ込む前段階の原水の処理について検討を進める。また、既存設備の構造体を改造して「MSABP」を組み込む手法についても検討する。