企業統計にみる設備投資は堅調
需要増に対応、生産能力の増強すすむ
食品製造業の設備投資が底堅い。四半期別法人企業統計調査（財務省）によると国内設備投資額は昨年７〜９月期まで13四半期連続で前年同期を上回った（ソフトウェア投資含む）。好調な企業業績を背景に、�ー�要増への対応（生産能力増強）、��既存設備の更新（生産性向上）、��人手不足対策（自動化・省人化）に取り組む企業が増えている。
今年も新工場の稼働や着工が相次ぐ一方で、海外投資を強めるという声も聞かれる。
ヤヨイサンフーズ気仙沼工場完成予想図
冷凍食品メーカーでは味のちぬやが新工場を愛媛県西予市に建設している。需要拡大に対し供給がタイトになっているため生産能力を高める。鉄骨造り２階建て。延床面積１万5000�屐�メンチカツやささみフライなど日産100万食の生産能力を持つ。稼働は今年４月を予定している。
ヤヨイサンフーズは宮城県気仙沼市に新工場を建設する。敷地面積２万299�屐７�物7317�屐Ｅ換�２階建て。延床１万2191�屐�水産加工品、介護食、水産カツ類を生産する。「自社工場の生産供給能力が限界に近付いていることから、将来不足が予想される生産能力に対応するため、気仙沼市内に最新鋭の工場を建設することにした」(同社)。年間生産能力は6400ｔを予定している。
旧気仙沼工場は2011年３月の東日本大震災で生産停止となり、福岡県大牟田市の九州第二工場や気仙沼松川工場を新設して生産を移していた。今回の新工場は旧工場があった場所から少し離れた高台にある赤岩港水産加工団地に建設する。着工は今年４月、稼働は来年秋頃を見込んでいる。
味の素は総額400億円を投じ拠点再編
日本食研の新工場外観イメージ
日本食研ホールディングスは愛媛県今治市に主力商品の液体ブレンド調味料、レトルト食品を製造する新工場を建設している。敷地面積５万2491�屐Ｅ換�造り６階建て。延床面積は４万2302�屐�需要増に対応するため、生産能力を最大で年間５万tまで引き上げる。竣工は今年９月予定。投資額は250億円。
味の素グループは味の素の製造事業の一部とクノール食品、味の素パッケージングを統合した「味の素食品」が今年４月に発足するが、川崎工場（神奈川県川崎市）内にスープなどの製造・包装工場を建設中。総額200億円を投じてＩＣＴ・自動化を進め、生産性を現在の２倍に高める。完工は2021年度上期を予定している。
味の素は中期経営計画（2017〜2019年）で国内生産体制の再編を重点戦略に掲げ、総額400億円を投じて生産拠点の集約・再編を進めている。三重工場ではすでに味の素パッケージング関西工場の製造・包装機能を移管し、約150億円を投じて調味料などの製造・包装一貫生産の新工場建設を進めている。完工は今年度下期の予定。
国内工場への投資は一巡、海外強化へ
ハナマルキがタイに建設する自社工場
「サイアムハナマルキ」の外観イメージ
日本銀行の国際収支統計によれば、食品製造業の海外直接投資は2015年が4314億円、2016年が3239億円だったが、2017年は9868億円と大きく伸びている。
ハナマルキは「液体塩こうじ」の自社工場をタイに建設する。今年１月着工。稼働は来年１月を予定している。投資額は土地取得代込10億円。現在は大利根工場（群馬県）で製造しタイに輸出している。花岡周一郎専務は「タイ向けの輸出が増えているため、現地に自社工場を立ち上げることにした。業務用商品を製造する」と語っている。
キユーピーは今年、中国広州工場を完成させる。東南アジアはすでに実績を上げているタイ、マレーシア、ベトナムに加えフィリピンに新たに事務所を開設し、本格参入を図る。長南収社長は「国内工場への投資は一巡しており、これから回収段階に入る。新規投資は海外を重点に行っていく」との考えを示しており、売上げの構成比を現状の8.5％から将来的に20％まで高めたいとしている。
極洋は井上誠社長が昨年の年末会見でタイに煮魚の新工場を設ける考えを明らかにした。生産体制がタイトになっているため、日本市場向けに供給するほか、「東南アジアでの販売も視野に入れている」（井上社長）。煮魚で国内外No.１企業をめざすという。
日本製粉はタイ現地法人のプレミックス生産能力の増強に続き、冷凍食品工場の建設を検討している。「生産体制の充実を図り、タイ国における事業展開を拡張させる」（同社）としている。