IoTで肉用牛の転倒事故死を防止

 全国畜産農業協同組合連合会(=全畜連)コンピューター総合研究所(=CAL)東日本電信電話(=NTT東日本)は、栃木県那須塩原市で、畜産分野の課題解決を目的とした共同実証実験を、今年5月から来年3月まで実施する。
 全畜連の子会社で肉用牛や豚の生産を行うぜんちく那須山麓牧場で、 Wi−Fi、画像データ解析技術、肉用牛の転倒自動検知技術、ミリ波ネットワークなどを活用し、肉用牛の転倒事故防止の取り組みの有効性を実証する。
 牛舎に設置した赤外線モーションセンサーで取得した画像データをWi−Fi経由で収集し、長距離の無線通信ができるミリ波ネットワークを利用して、クラウドにアップロードする。蓄積した画像データを利用して、肉用牛の転倒状態を解析する。また、転倒検知時に畜産農家のスマートフォンやタブレット端末などに通知し、肉用牛の転倒事故死を防止する。
 画像解析技術で肉用牛の転倒状態を検知するので、肉用牛に直接センサーを取り付けないため牛に負担がかからない。また、スマートフォンやタブレット端末などに通知するので畜産農家が肉用牛を常時監視しなくて良い。
 全畜連は実証実験フィールドの提供、効果検証、対象牛の肥育、監視を、CALは畜産牛向け行動監視支援システム(画像ビッグデータ解析システム)、赤外線モーションセンサーなどを提供、NTT東日本は実証実験の全体を企画・運営、Wi−Fiアクセスポイント、ミリ波ネットワーク、 ネットワークカメラなどの提供をそれぞれ行う。

 全畜連は会員への優良な家畜の生産に必要な飼料・資材の斡旋供給、生産物の有利販売、素牛・雌牛の貸付、経営支援・組織基盤の維持発展を図る事業などを行っている。
 仕入れた子牛を肉用牛として出荷できる状態まで育てる中で、出荷直前に転倒すると、夜間など、転倒に気付かずにそのままの状態で放置すると、肺が圧迫されて死ぬことがあり、畜産農家にとっては大きな損失につながる。
 全畜連は、毎年1〜2%発生する出荷前の肉用牛の転倒事故死によって生じる1頭あたり約100万円の大きな損失を重要な課題とし、肉用牛の転倒事故死の防止方法を模索してきた。
 肉用牛に直接取り付けるセンサーを使わずに、肉用牛にストレスをかけないで転倒事故死による経済的損失を防止するため、全畜連と畜産牛向け行動監視支援システムを提供するCAL、ICT活用による地域産業の発展をサポートするNTT東日本は、Wi−Fi・画像データ解析技術・肉用牛の転倒自動検知技術・ミリ波ネットワーク等を活用した実証実験を実施する。
 今後は肉用牛の転倒自動検知による安定した肥育・出荷に対する支援効果を検証し、畜産分野で簡単に利用できるレディメイド型のIoTサービスの商品化をめざす。