「かにかまの磯辺揚げ」が好調
日本水産 姫路総合工場

     姫路総合工場の外観

 日本水産の姫路総合工場(兵庫県姫路市、山川智彦総合工場長)は、ちくわや「かに棒」、「かにフレーク」などの日配品と市販用をメインとした冷凍食品を年間約2万4000t生産する基幹工場。冷凍食品は今春発売した市販用「かにかまの磯辺揚げ」の販売が好調のため、このラインだけは今年7月から3直体制とし、今後、原料となる「かにかま」の生産能力を増強する方針。
 工場の設立は1993年。一部4階建て。1・3階が加工食品工場。1階で「かに棒」、「かにフレーク」を生産し、3階でちくわ類を生産する。加工食品工場は365日稼働しているため工場内が無人になることはない。
 2階が冷凍食品工場。ちゃんぽんなどの麺類、「ちくわの磯辺揚げ」などのフライ類、市販用・業務用春巻の3ラインある。原料の搬入から製品の出荷まで、ほぼ直線的なレイアウトで交差汚染のリスクを低減している。

   入退場は静脈認証で管理している

 

 従業員の入退場はあらかじめ登録した静脈認証で管理しており、センサーに手のひらをかざすと認識してドアが開閉する仕組み。
 工場内に設置したカメラを「安全安心カメラ」と呼ぶ。08年以降、段階的に設置台数を増やし、外周を含めトータルで224台ある。これらのカメラはフードディフェンスに寄与するだけでなく、品質苦情・事故、労災発生時の状況把握、生産工程中の設備トラブル、作業ミス時の正確な状況把握、迅速な原因追及などに高い効果を上げているという。
 05年には太陽光発電パネルを設置した。一般家庭およそ20世帯分の電力を発電し、良水化設備の電源に充てている。
 製造工程で大きな設備投資はないが、X線検査装置を最近入れ替えた。

フライ類は3直体制で生産能力増強

 市販用冷凍食品「ほしいぶんだけ ちくわの磯辺揚げ」は、東日本大震災で被災した女川工場(宮城)から移管した。姫路総合工場の冷凍食品工場は通常2直で稼働しているが、「かにかまの磯辺揚げ」と合わせて販売が好調のため、7月から3直体制を敷いている。

    「かにかまの磯辺揚げ」の油調工程

 原料のちくわは、3階のちくわ製造ラインで生産する。日配品のちくわは8〜17時に製造し、ちくわの磯辺揚げ用は夜間操業して生産する。日配品のちくわと異なり、焼き目をつけないのが特徴。
 2階の冷凍食品工場に運んだちくわは、まずカッターで半分に割り、打ち粉を付けた後、ふるいにかけて余分な粉を落とし、バッターを付け、食感を良くするため異なる温度と時間で2度揚げする。
 同じラインで生産する「かにかまの磯辺揚げ」は、1階の加工食品工場で生産したかに風かまぼこを原料に使う。販売が好調のため、1階のかにかま生産ラインを改良し、生産能力を高める予定。

ちゃんぽんの具材はモガミフーズから

 市販用冷凍食品「わが家の麺自慢ちゃんぽん」は姫路総合工場でのみ生産するロングセラー商品。麺とスープを製造し、ニッスイグループのモガミフーズ(山形)で生産した具材と一緒に包装する。
 麺は真空ミキサーで練り上げ、30分間熟成させる。ローラーで圧延し、段階的に2mmの厚さに伸ばす。3分間ゆで、1食分ずつトレーに投入し、スパイラルフリーザーで凍結。トレーから取り出してシュリンク包装し、スープと具材を合わせて外袋に包装する。ちゃんぽんの箱詰めは自社で開発したロボットを使って省人化を図っている。
 同じラインで生産する「えび担々麺」も人気があるという。

春巻は成形機の爪を改良、自社開発機で

 冷凍春巻は業務用と市販用の両方を手掛けている。春巻の出来を左右する成形機は、以前は国内機器メーカー製を使っていたが、自社開発機に切り替えている。業務用6台、市販用8台の計14台が整然と並ぶ。

スーパーの惣菜売場などに並ぶ業務用春巻。
皮と皮の間に空洞がある

 皮は110〜120℃で焼く。成形する際、中具の水分が皮に移行しないよう、油でコーティングする。皮を折りたたみ、くるっと回転させて一瞬で巻く。今秋新発売した業務用春巻は皮を折りたたむツメの形状を工夫し、これまでよりゆるく巻くようにした。油調後の春巻の断面を見ると、空洞が大きいことが分かる。皮の配合を変えるとともに、皮と皮の間にできる空洞がパリッとした食感につなげている。
 赤波江直幸冷凍食品工場長は「一昨年から春巻をゆるく巻くことにチャレンジしてきた。ツメの開発には時間がかかったが、いいものができた。社内で表彰も受けた」と春巻の出来映えに自信を示している。

ちくわの生産ラインは365日稼働

 ちくわ類の生産ラインは全部で7本ある。そのうち、細物ちくわ用が5本、太物ちくわ用が2本の構成。冷凍食品と異なり、当日受注もある。日配のため365日稼働しており、中には19時間稼働するラインもある。作り置きができないため、需要をある程度予測する必要があるという。
 主原料はすり身100%で、そのうち90%はすけそうだらを使い、アイテムによってはハモやたちうおを少量使う。原料を解凍後、塩を入れて練り上げ、たん白質を抽出し、粘りを出す。
 串に巻いて成形した後、70℃で15分間“すわらせる”と、ゴムのような弾力が生まれる。その後、焼き工程で品温を85℃以上にする。冷却し、ベルト上を流しながら製品を整列させ、包装工程に送る。

市販用冷凍食品「ちくわの磯辺揚げ」に使うちくわ      日配のちくわを焼成する工程
には焼き目を付けない