食品エンジニアリングの精鋭集まる
アルトリスト 代表取締役社長 橋田 浩一氏

 食品や飲料向けに包装、マテリアルハンドリング、エンジニアリングを手がけるアルトリスト。会社はまだ若いが、スタッフには大手食品メーカーの技術部門出身者もいるプロの集団。京都に食品業界向けロボットの研究開発所をこのほど開設するなど、元気がある。

      橋田社長

 ――会社は2008年設立とまだ若い。
 橋田 2000年まで機械商社におり、食品業界向けに機器やエンジニアリング関連を販売していました。その商社はマテハン関係が特に強く、大手コンベアメーカーの1億5000万円クラスのプラントを大手調味料メーカーに導入する際、私も携わりました。このほか大手醤油メーカーがロボットシステムを導入する際にも担当するなど、大きなプロジェクトに携わることができました。これらの経験が、もっとエンジニアリングを突き詰めたいという気持ちを強くさせ、包装機械メーカー勤務を経て、会社を立ち上げました。

 ――まず何から始めた。
 橋田 できることから始めるしかありません。食品に特化したエンジニアリング会社になろうと、今まで培ってきた関係先を一から掘り起こしました。お客さんももちろん大切ですが、仕入れ先の確保が重要。私たちには与信もほとんどない状態でしたから、それも大変でした。
 奇しくも、発足した2008年は10月にリーマンショックがあり、大手機械メーカーも仕事が減っていたため、私たちのようなできたばかりの会社でも取り引きしていただきました。

 ――扱う機種は。
 橋田 食品機械や包装機械、物流機械、冷凍・冷蔵機器などをエンジニアリングコンサルティングするとともに、販売しています。私はマテハン関連に強いのですが、スタッフには冷凍機メーカー出身者がいるなど、各方面に対応しています。

 ――直近の業績は。
 橋田 2人でスタートした会社ですが、現在は15名に増えました。業績も初年度は1億円でしたが、今期(9月決算)は13億円となる見込み。商談の数も着実に増えています。
 会社自体は若いのですが、スタッフは大手食品メーカーの技術部門OBなどもいるプロの集団。商談する相手も技術のプロの方たちばかり。中途半端な知識では相手にされません。業績が伸びているのはそういったプロの方たちにも納得していただく技術と、信頼でつかんでいるからだと自負しています。

会社名に込めた思い

 ――FOOMAにも出展した。
 橋田 今年で2回目の出展です。昨年は(株)キューケンとの共同出展でしたが、今回は単独出展。ドイツのヴィーデマン・テクニック社製のステンレス製排水溝と桝を紹介しました。衛生基準の高いドイツで40年の歴史を持ち、採用され続けている排水溝です。排水溝周りは食品工場にとって悩みが尽きません。空調関係とともに早い段階から手を打っておきたいところですね。

 ――ロボットシステムも始動した。
 橋田 今年3月、京都にロボットの研究開発所を開設しました。人手作業でのリスク低減や今後の労働人口減少への対策、労働条件の改善など、日本の食品産業が抱えている課題を解決するため、6軸多関節ロボットとパラレルリンクロボットを常設し、その周辺アプリケーションの研究、開発を行っています。この事業は5月に、中小企業庁の試作開発等支援補助事業者として採択されました。

 ――食品機械や包装機械のほか、今回加わった排水溝やロボットシステム。どれが事業の柱になりそう?
 橋田 今は大手食品メーカー向けのエンジニアリングコンサルティングが主体ですが、そればかりに比重を置いておくわけにはいきません。何かが起きた際のためにも、機械や資材、ロボットシステムなど単品の商品を育てている段階です。

 ――今後の展望は。
 橋田 2018年までに上場を目指しています。売上げが当面の目標だった10億円を超え、周囲からは“第2の創業期だね”と言われるようになりました。新卒者を採用する時期にもなりましたし、若い人材を得て、より会社を盛り上げていきたいですね。
 ユーザーや仕入れ先はもちろん、この先何があっても従業員を大切にする会社でありたいと思います。自ら会社を立ち上げようと思ったのも会社とは何が大事なのかを考えていたからです。従業員を幸福にする会社は周囲から見ても素晴らしい会社でしょう。
 ユーザー、仕入れ先、従業員、関係するすべての方の利益と幸福が自社の幸福と考え、誠実、地道、努力をモットーとする「利他主義者(アルトリスト)」・・・。いつまでもそのことを忘れまいと会社名に込めたわけですから。

 フードエンジニアリングタイムス(FEN)2013年9月4日号掲載