社員のエコ意識向上で提案力増す
三浦工業 東京支店 原修二支店長(関東統括部 統括部長)

 三浦工業の原修二東京支店長は「省エネとCO2削減の環境対策が焦点。ユーザーの設備投資の先送りが目立つ中、社員のエコに対する積極的な姿勢が提案力を増し、難局をチャンスに変えている」と語っている。

    原東京支店長

 ――ボイラ業界を席巻している。
 原 当社のボイラは食品工場、水産加工品、化学工場、リネン、クリーニング、ビルの空調設備などに幅広く活用されています。中でも食品工業向けが25%を占めています。
 小型貫流ボイラを誕生させたことでユーザー数が増えたという経緯があります。無資格無検査で導入できる点が後押ししました。現在、業界全体で製造しているボイラの93%が小型貫流ボイラです。そのうち六割近くが当社の製品であり、動的シェアでは国内で蒸気発生設備の半数は当社のボイラで占めていることになります。従来は炉筒煙管式ボイラが主流でしたが、小型貫流ボイラが業界地図を塗り替えたともいえます。

 ――昨年のボイラの動向は?
 原 「省エネ」と「CO2削減」がキーワードの年でした。どの産業でもそうだと思いますが、ボイラにも当然求められていることです。景気の影響を受け、設備投資や更新を控えておこうというユーザーが多かった1年でもあります。2〜3年前はイニシャルコストがかかろうとも、環境配慮の設備投資が社会に対する姿勢だという動きがありましたが、昨年は先送りする動きが目立っていました。

 ――御社も影響を受けてしまう。
 原 逆に「時間」を得ることができたわけです。今はユーザーのもとへ欠かさず出向いて「省エネ診断」を働きかけるときだと認識しています。営業は導入時だけに動いているわけではありません。ボイラに限らず蒸気の使い方、改善点などをユーザーに伝え、現状を共有します。そうすることで来るべき設備投資のときにすぐに動けるようになります。

 ――今後の展望は?
 原 ガスに注目です。CO2排出量は石炭が100だとすれば、重油が75、LNG(都市ガス)が50です。SQシリーズは小型貫流ボイラの主力ですが、業界でも屈指の低NOxと低CO2を実現しており、ガス関連や環境関連の多くの賞を受賞しました。
 また、神戸製鋼様と「熱回収式蒸気駆動エアコンプレッサ」を開発しており、本格的に導入を呼びかけます。当社の熱有効利用技術と神戸製鋼様のコンプレッサ技術を融合させ、大幅な省エネとCO2削減を実現するシステムです。

 ――省エネとCO2削減はユーザーが敏感になるところだ。
 原 「蒸気膨張エネルギー」でスチームモータを駆動し、圧縮空気を生成することで、電気代の削減、電力負荷のピークカットに大きく貢献します。排蒸気は工場のプロセスで従来通り使うことができます。独自の廃熱回収機能で熱ロスを回収、ボイラ給水予熱などに利用して、システムエネルギー効率を向上させます。

 ――課題と解決に向けての姿勢は?
 原 更新だけでなく、今稼動中のものをどう対応するかを常に考えなければなりません。国内で当社の製品が数多く導入されているということは、それだけ環境問題に関わっていることになります。
 この課題に対応する動きは社員の省エネ意識に表れています。全国の商工会議所が主催者となって「エコ検定」を実施していますが、12月の検定では1000名の社員が検定認証を受けました。全社員数は3000名なので、7月実施と合わせますと、実に1/2の社員がエコ検定を持つことになります。このような会社はそうはないと思います。検定を受けるのは業務命令ではなく、自己意思のため、社内全体の空気はとてもいい感じになっています。結局、知識をつけることは自らを救います。ユーザーによりよい提案ができ、いいお付き合いができるわけです。

 フードエンジニアリングタイムス(FEN)2010年1月20日号掲載