長期保存性に優れた塩素系除菌剤、コロナ不活化も
�螢圈璽坤�ード 代表取締役 沖原正宜氏
沖原社長
大腸菌や黄色ブドウ球菌、ノロウイルスなどに高い殺菌効果を示す塩素系除菌消臭剤「ピーズガード」がコロナ禍による清潔・衛生意識の高まりで企業からの受注を伸ばしている。殺菌効果や即効性は次亜塩素酸水と変わらないが、長期保存性では大きなアドバンテージがある。
開発製造する�螢圈璽坤�ード（東京都品川区）は東京ビッグサイトで９月28〜30日開催される「ＦＯＯＤ展」に出展し、製品の特性や効能、企業から選ばれる理由などについて説明するミニセミナーを開催する。
沖原社長は「工場長や品質管理の担当者、生産技術部の幹部の方々に関心の高い内容にしたい」と意欲を示す。
保存寿命は最長３年、有効塩素濃度を維持
――除菌消臭剤「ピーズガード」とは？
沖原 次亜塩素酸ナトリウムに純水（ＲＯ逆浸透膜＋イオン交換）を99％以上加えて製造した安定型弱アルカリ性次亜水（次亜塩素酸水溶液）です。
――安定型というのは？
沖原 ふつうはｐＨ値がアルカリから酸性に経時変化しますが、それがほとんど見られません。つまり長期間安定して有効塩素濃度を維持します。
当社の「ピーズガード」のｐＨ値は雑貨扱いの除菌消臭剤が濃度50ppmでｐＨ９〜10、食品添加物適正検査をクリアした殺菌液剤が濃度100〜200ppmでｐＨ10〜11.5、さらに食品工場向けの特注品は濃度1000ppmでｐＨ11〜12となり、時間がたってもそこから動くことはありません。
――保存期間はどれぐらい？
沖原 約２〜３年間と長寿命です。したがって当社では、製造から２年または３年の品質保証期間を印字して販売しています。
安定型弱アルカリ性次亜塩素酸ナトリウムを主原料にした「ピーズガード」の各種製品。正面
の緑色のパッケージが食品添加物殺菌料として認められた製品で食品工場などで使われている
――次亜塩素酸水（ｐＨ6.5以下）は保存期間が短いと聞く。この製品はなぜ長寿命が可能？
沖原 特殊製法によるためとしか言えません。技術が公開されてしまうため、特許も申請していません。当社製品の主成分（活性因子）は次亜塩素酸イオン（OCl-）で、これは次亜塩素酸水（ｐＨ6.5以下）の次亜塩素酸分子（HOCl）と違って自己分解しません。HOClは揮発した後に分解して消えてなくなります。このため、時間が経つと有効塩素濃度が低減し、効果が薄れてきます。
一方でOCl-は自己分解せず、空中に噴霧しても菌やウイルスなど有機物のたんぱく質に接触して反応、分解、消滅するまで浮遊しています。当社の特殊製法は次亜塩素酸ナトリウムを希釈するのではなく、イオン化がポイント。イオン化した状態にして液中で冬眠させているイメージです。これが塩素濃度を維持できる理由です。
塩素濃度1000ppmでも安全を実証
――次亜塩素酸水は一定の条件下で新型コロナを消毒できるが、「ピーズガード」は？
沖原 薬機法に抵触するため効果をうたうことはできませんが、食環境衛生研究所（群馬県前橋市）でデルタ株に対する不活化のエビデンスはすでに取っています（50ppmで20秒、99.00％の不活化効果）。
――安全性についてはどうか？
沖原 有効塩素濃度1000ppmでも全身曝露による吸引毒性が認められないことを薬物安全性試験センター（東京都新宿区）で確認しています。無味無臭で手荒れや、喉・目への刺激はありませんし、色落ち（漂白）や通常の使用法では金属が錆びる心配もありません。
さらに、食材へのダメージがほとんどなく、色・味落ち、ドリップ流出もしません。食材の鮮度保持に有効です。
空間噴霧に最適、噴霧器は１万台突破
――「ピーズガード」の導入先は？
沖原 多種多様な業種業態に採用いただいいております。有名ホテルや旅館、外食店の厨房・ホールではノロウイルス対策にスプレー式が使われたり、大手の食品工場や弁当工場ではカビ対策として噴霧器と一緒に活用されたりしています。
――噴霧器がある？
沖原 噴霧器は流体方式や超音波方式があり、工場やホテルなどの大空間用から事務所・応接室などのスタンド型、車載用の卓上型までラインナップを充実させています。噴霧器の販売台数は累計で１万台を超えています。
液剤容量3.5リットルの卓上・床置き型（手前）をはじめ噴霧器のラインナップを充実させ
ている（写真は一部）
――次亜塩素酸水の空間噴霧による除菌効果はまだ評価が定まっていないが？
沖原 次亜塩素酸水を噴霧する場合は高湿度の環境でないと効果が出ないという研究結果があります。
当社は乾いた環境で水分を早く揮発させて、中に入っている主成分のOCl-をエアゾール化のように裸にして飛ばしますから、次亜塩素酸水に比べて短時間で除菌効果が現われます。実際「ピーズガード」は湿度80％以下でも有効であることを検証済みです。
ＦＯＯＤ展に出展、福崎三重大教授が講演
――９月28日開幕のＦＯＯＤ展では「フードファクトリー」に出展する。
沖原 洗浄・殺菌工学の第一人者で三重大学大学院生物資源学研究科の福崎智司教授（工学博士）が当社のブース（Ｇ-28）で９月29日午後２時半から特別講演を行います。「ピーズガード」を布に浸み込ませた新開発の「ウェットワイパー」について、そのふき取りの性能評価結果を解説します。
また、当社の野々村和英技術顧問が９月28日午後４時から「カビ汚染はこう防ごう！〜パン工場の事例・他」をテーマに出展者セミナーを行います。
このほかにも、ピーズガードが選ばれた理由や空間噴霧の試験結果、柑橘類への防カビ・鮮度保持効果などに関するセミナーを当社ブースで開催します。
食品工場の工場長や品質管理の担当者、生産技術部の幹部の方々に関心の高い内容にしたいと思います。
（おきはら・まさよし）学卒後、父親が経営する冷凍空調設備工事会社に入社。13年前に現在の「ピーズガード」につながる技術の開発者と出会い、1999年同社を設立。事業を軌道に乗せるまで苦労を重ねたが、採用が少しずつ広がって評価も高まり、2021年に黒字化を達成した。1943年３月東京生まれ、79歳。早稲田大学理工学部機械工学科卒。