電磁波の一種である「マイクロ波」を産業レベルで活用し、製造工程の高度化や合理化、新素材の開発に取り組むマイクロ波化学（大阪府吹田市、吉野巌社長）は食品分野を研究開発の重点領域に位置付けている。その一環として「食品解凍技術」の開発にこのほど着手した。業務用電子レンジで実績のあるパナソニックアプライアンス社と共同で実証実験を進めている。
まずは冷凍弁当など調理済み食品をムラなく均一に解凍する技術の確立を2023年までにめざす。用途は小売店や外食店での店内解凍を想定している。将来的には冷凍原料の解凍に応用することや、家庭用電子レンジへの技術導入も視野に入れている。
食品業界ではこれまで冷凍技術の進化に注目が集まりがちだったが、最近は食品メーカーや冷凍機メーカーが解凍品質や解凍効率にも目を向け始めている。マイクロ波化学の担当者は「解凍技術が高度化することで、鮮度保持のコントロール度が向上する。冷凍食品の活用拡大につなげて食品ロス削減はもちろん、食材物流の効率化でＣＯ２排出削減にも貢献できる」と語る。
電子レンジは様々な食材が入った弁当などを均一に解凍するのが困難と言われる。電子レンジはマイクロ波を照射することで対象物にエネルギーを直接伝達し、効率的に昇温するが、対象物の特性によってマイクロ波の吸収度合いが異なる。このため時間当たりの昇温速度に差異が生まれ、温度ムラの原因となる。
同社はマイクロ波の周波数を調整して対象物の特定の場所に照射（加熱）する技術を強みに持つ。実証実験ではこのコントロール技術に様々な包材を組み合わせることで、食材や場所ごとに昇温速度の差異を緩和させ、温度ムラを抑制する可能性を見い出した。
マイクロ波による解凍は自然解凍や流水解凍など従来型に比べて�．┘優襯�ー効率の向上、�⊂魂校�間の短縮、�Ａ�置の省スペース化、�ご蔽韻柄犧鄒�、�チ宛綵萢�の簡素化――などのメリットが期待できる。
同社の担当者は「特に拡大が見込まれる再生可能エネルギーを使うことでＣＯ２排出量の大幅な削減が可能になる。通常の加熱に比べて７〜８割は減らせる」と語り、「カーボンニュートラルの実現に直結する」と強調する。
マイクロ波化学はマイクロ波の実用化を産業レベルに引き上げたことで各方面から注目を集め、すでに医薬、電子材料、食品（乳化剤）、環境（ケミカルリサイクル）の分野で技術採用が進んでいる。食品解凍の実用化も十分に期待できそうだ。