三島食品の関東工場はスタッフが生き生きと仕事をしているのが印象的。それを裏付けるかのように、工場内にはモチベーションを高めるユニークな施策を各所で施している。時折現れる「改善20面相」が目を光らせる。
オレンジ色のハチマキは「指差呼称隊」、
異常がないかを指さし声を挙げてチェック
色のついたハチマキを締めているスタッフが仲間を刺激し合う。赤色ハチマキの「安全安心推進」は違反商品を市場へ出さないために、賞味期限など要のチェックを行なう責任者。黄色のハチマキは「アレルゲンGメン」と呼ばれ、アレルゲン成分の入った製品を生産した後の切り替え清掃後、アレルゲン物質がないことを重点的に目視確認する。
このようなハチマキを締めたスタッフは生産ラインで毎日活躍しているが、これとは別に時折姿を現し、目を光らせる人物がいる。それが「改善20面相」。突如として現れ、改善すべき点を指摘し、助言を与え、去っていく。経験と知見を兼ね備えている人物なのだが、誰が扮しているかは謎のままだ。
施策はもちろん、ネーミングもまたユニークなものが多い。
レトルト食品の製造ラインの1つである包装装置に「命の光」と名付けた赤く点灯するランプを設置した。“このランプが点灯しているときは、機械を動かすな”と周囲に知らせるもので、事故を未然に防ぐために考え出したもの。
実はこの充填機の対面側は死角となっているため、反対方向にいるスタッフの姿が見づらいのが問題となっていた。機械にトラブルが生じた際、あるスタッフが機械を止めて手直ししようとしても、別のスタッフがそれに気づかずに機械を再運転することが想定できる。手が機械に巻き込まれるなど大事故にもなりかねない。冷凍庫の扉に改良を施した安全スイッチと同様に、自分たちの安全は自分たちで確保するという危機管理の表れだ。
包装装置に取り付けた“命の光”
複雑な形をした包装機の液充填部
包装した後、梱包ラインへ受け渡す箇所には「晒し首コーナー」という何とも意味深なネーミングをした一画を設けている。
晒し首コーナー
これは最後の要となる梱包ラインのスタッフが、前工程までの“ミス”を発見した際に、バケツの中に入れておくもの。従って各部門のスタッフは全スタッフに“ミス”を晒されないよう細心の注意を払うことになる。
こうした暗黙の指摘は、スタッフ同士の日々のコミュニケーションが成り立っているから、うまく機能しているのだろう。「晒し首」というネーミングもその手法も、いかにも関東工場らしい施策といえる。
コミュニケーションが機能していることは、震災後の夜間操業、さらに計画停電の際でも、不安や不満の声が挙がらずにスムーズに移行できたことからも伺うことができる。
小彼徹工場長はこう語る。「関東工場が推進しているのは5Sではなく、“4S”活動。何も驚くことではありません。スタッフ全員を“躾ける”必要はないと思っています。みんなわかっていますから。全員が自分のやるべきことを理解し、行動し、お互いを刺激し、助け合っています」。その言葉は力強いものだった。
金属検出器を通る具材、安全安心は絶対条件