六次産業化にこそ、新調理システムを

 新調理システムを専門として推奨しているニチワ電機。各素材の適正な調理温度、時間を計測し、データ化することで、ムダなく素材を生かし切るこの調理法は「これから加工を始める生産者にこそ活用できるはず」と太鼓判を押す。

       西常務

 「六次産業化への当社の対応はまだまだこれから」。そう語るのは東京支店長も兼務する西耕平常務。同社が一次産業者向けに提案を本格化するきっかけとなったのが、今年春、六次産業化を支援するファンドが創設され、生産者が厨房機器の導入資金も補助対象になることを知ったことだった。これまでにも生産者との接点はなかったわけではないが、「より意識的に提案するようになった」とこの1年を振り返る。
 農業法人に限らず、外食産業が一次産業者と提携する、あるいは外食産業がベンチャーとして新たに農業法人を立ち上げる際も補助の対象となる。外食産業への対応は同社の得意とするところであり、その点でも六次産業化に意識を向けざるをえなかった。

おいしさをそのまま真空パック

 同社は「新調理システム推進協会」の正会員であり、西常務はその事務局長を務めている。新調理システムとは、長年の経験と勘を必要とする調理技術に科学的な分析を加えることにより、マニュアル調理、計画的な料理提供を実現するシステム。特に、「クックチル」や「真空調理」は集中大量調理、保存が可能で、調理現場の閑忙の波をフラットにできる。ポイントは「TT管理」(Time, And, Temperature)といわれ、各素材の適正な調理温度、時間を計測し、データ化することにより、効率のよい、ムダのない、素材を生かし切った料理を実現することができる。
 20年前から日本でもこの調理手法が外食産業や給食事業者に導入され始めたが、「あの当時と、現在の六次産業化が重なる」と西常務は語る。「一次産業者は生産のプロだが、加工となるとわからないことが多い。計数管理が特徴の新調理システムから入れば、加工もわかりやすい。六次産業化をめざす生産者にこそ、利用してもらいたいシステム」と説明する。

 同社は10月に東京で開催された農業資材の専門展「アグリテック」に出展、同社と共同開発しているHENKELMAN社(オランダ)の真空包装機を紹介した。短時間で味が良く染み込み、歩留まりも良い真空調理法を生産者に披露。袋詰め調理することで配達や保管に向いており、2次汚染の防止にも役立ち、食品加工と保存にも適していることを訴求した。
 「来場者の目的意識の高さを感じた」とアグリテック初出展に確かな手応えをつかんだという。同時に出品したスチームコンベクションオーブンによる試食提案も、生産者にとっては新鮮なものだったようだ。
 「生産者が“加工”という分野に挑戦することは困難も多い。しかし、TTPをはじめ一次産業の付加価値を創出すべき時代として市場は動き、そこに当社の長年培ってきたソフト力と実績のあるハードでお手伝いできれば」と語り、新たな潮流に期待を込めている。