野口正見の「5S活動による食品工場改善」 −28−
事例1 第二工場の場合

 第二工場はパン粉付け商品の生産を担当していた。工場は比較的新しく、老朽化はしてなかった。
 工場長が委員長として5S活動を推進し、課長級が委員を務めていたが、工場長も人手が不足のとき(欠勤者)はラインに入るなど幹部も直接人員化していた。中小の現場ではよくあることだが、これでは本社の5S委員会への出席や、パトロールによる指摘事項の改善指示への対応に支障があった。
 そこで今度は係長を委員長にし、工場長、課長は支援する体制とした。第二工場の課題はパン粉の落下、バッターのこぼれ(バケツによる供給)、打ち粉(軽い)の飛散防止、電気配線・水・エアーの配管などの整理・整頓であった。これらは5Sのハード面での改善で難しい課題ではない。そこで組織を変えて、さらに5S委員会を作業終了後の午後5時から6時頃まで開催し指導した。
 改善は格段に進捗した。パン粉の落下防止には出入口に使われる厚いビニールシートを使い、落下の箇所を改善した。柔軟なので工作がしやすい利点があった。バッターのこぼれには供給機を導入し、打ち粉の飛散防止はその配合の変更テストに取り掛かった。配線、配管類は必要性を検討し、不要部分は切除し、S字フックで収納場所を作成した。係長のやる気とその部下の若手のリーダーシップ、それに管理職の支援とが相まって、その他の指摘事項の改善も加速度的に進捗した。
 部署長は一人工にならないことが重要。目に見えない損失発生、部下への権限移譲こそが大切という実例だ。