ファミマの中華まん製造工場を新設
おいしさ向上、ラインナップ強化に貢献
井村屋 点心・デリ工場
井村屋グループの浅田会長
井村屋は本社（三重県津市）の敷地に昨年、ファミリーマートの中華まん製造拠点として「点心・デリ工場」を新設した。投資額は約20億円。井村屋グループの浅田剛夫会長ＣＥＯは「ファミリーマートの商品開発に対する熱意と意気込みに我々は設備投資で応えた」と語るなど、パートナー企業として連携強化の姿勢を示す。今年は中華まんのリニューアルに伴い生産ラインを増設。秋冬のトップシーズンを前に日産80万個の生産体制を整えた。
新設した「点心・デリ工場」の延床面積は6400�屐�生産ラインは定番の本格肉まんが３ライン、ピザまんが１ライン。さらに今年、北海道産小麦粉100％を使った「プレミアム中華まん」シリーズの専用ラインを１本増設した。投資額は約６億円。
本格肉まんは生地のミキシングや発酵、蒸し工程などを経て冷凍で出荷する。
生地のミキシングは大型ミキサー５台を使う。昨年、新型に入れ替えた。生地練りの撹拌（かくはん）軸を湾曲型に変更することで均一でブレのない生地を実現した。小麦粉や砂糖、ラード、食塩などの配合によって時間や速度を変えながら均一に練り上げる。容量は１回当たり約20�圈�
大型ミキサーで生地を練る。写真はピザまん用
ミキシングの後は生地を熟成発酵させる（一次発酵）。今年は発酵温度を見直し、生地のうま味と香りを良くし、ふっくらとした食感を実現。口どけの良さも向上させた。
具材の調理工程では豚肉や玉ねぎ、調味料などを混ぜ合わせるが、生肉の温度管理を徹底し、肉のうま味を閉じ込める練り方で具材を作っている。今年は豚肉のカットサイズを大きくすると共にダイスカット状に変更して食べごたえ良くした。
一次発酵した生地はＡＧＶ（無人搬送車）でシート成型ラインに搬送し、自動昇降機で上から投入する。１回当たりの投入量は約40�圈Ｆ�まん1000個分に相当する。
シート成型ラインで「手包みの食感」実現
シート成型ラインでゆっくりと生地を圧延
シート成型ラインでは生地をゆっくりと薄く圧延する。担当者によれば「一気に延ばすと生地にダメージを与えてしまう。やさしく徐々に延ばすことで手包みのような食感が得られる」という。
薄く延ばした生地の上に具材を充てん機で乗せ、包あん機で筒状に丸めていく。筒状に包むことで具材をたっぷり入れることができる。具材比率は45％まで高めた。
筒状に包んだ後はシャッター（専用刃）で丸くカットし、自動機でひねりを加えて口を閉じる。ウェートチェッカーを通し、歪みがないか従業員が目視で検品したうえで敷紙に５個×６列ごとに整列させると、自動でラックに積み上がっていく。ラック１台当たり肉まんを1000個収納する。この後、肉まんをホイロで１時間ほど発酵させる（二次発酵）。
大型の蒸し器は８台設置している。二次発酵後はラック２台を蒸し器に入れ、90℃で約20分蒸し上げる。担当者によれば「生地は1.5倍にまで膨らむ」という。
空調の効いた放冷室で粗熱を取り、芯温20℃まで下げる。生地から余分な水分を取り除くことで「店舗で再加熱した時にちょうど良くふっくらと仕上がる」（担当者）。
粗熱を取った肉まんはフィルム包装、箱詰め包装、冷凍工程を経て出荷する。
筒状に包み込むことで具材比率45％に高めた
目視で検品したうえで敷紙に整列させる
「オープンイノベーションを推進」浅田会長
二次発酵後は蒸し器で約20分蒸し上げる
今年ファミリーマートの中華まんに新機軸商品としてベイクド商品の「焼きパオズ（包子）」シリーズが加わった。蒸し上げた後に焼成工程を加えるもので、パンのような見た目ともっちりとした食感が特徴。約15ｍのトンネルオーブンに放冷した中華まんを投入し、じっくりと焼き上げる。焼成能力は１時間当たり約１万個。第１弾はカマンベールやゴルゴンゾーラなど４種類のチーズを包んだコク深い味わいの「クワトロチーズ」を10月２日から発売する。
ファミリーマートは中華まんを昨年大幅にリニューアルし、売上げを前年比118.4％に伸ばすなど、中華まん市場をけん引する躍進を見せた。背景には井村屋のこうした生産体制の強化があった。
浅田剛夫会長ＣＥＯは「小売店の顧客ニーズを読み取る情報力、メーカーの開発力、安定生産を可能にする設備機器が一体となったオープンイノベーションの推進が今の時代に欠かせない」と語っている。
「焼きパオズ」を焼成するトンネルオーブン
冷凍倉庫設備の「アイアイタワー」