中古事業の構造改革、大胆に進める
オークション方式を販売店に導入
テンポスバスターズ 取締役中古事業部長 上田雄一郎氏
上田取締役
�螢謄鵐櫂好丱好拭璽�（東京都大田区、森下篤史社長）は売上げが伸び悩む中古厨房機器事業をテコ入れし、仕入れと流通の仕組みを大きく転換する構造改革に取り組んでいる。飲食店から買い取った中古機器を各店舗間で「競り」にかけるオークション方式を昨年12月に導入した。店舗に競争意識を植え付け、自ら考える力を育てるねらいがある。「これまでは現場の認識が市場ニーズや市場価格とかけ離れたことが問題だった」（上田取締役）とし、新たな仕組みを活用してコア事業の成長展開を図る。
――中古機器の「競り」の仕組みとは？
上田 これまでは中古事業部が店を閉めた飲食店から厨房機器を買い取り、洗浄やメンテナンスをして全国のテンポスバスターズ58店舗に販売していました。本社から各店舗に半ば強制的に買い取らせていたわけです。
昨年12月からこの仕組みを大きく転換させて「競り」を導入しました。各店舗の責任者が競りに参加し、最も高い値段を付けた店舗が買い取れるようにしました。
まずは戸塚買取センター（神奈川県横浜市）で首都圏の９店舗を対象に実施しました。買取センターは全国に12カ所あり、今後は各エリアごとに実施します。合計で約40店舗が参加する予定です。
競りはビデオ会議で行います。商品の特長やキズなどの有無を説明した後、中古事業部が設定した最低価格から開始します。わずか１分で買値が決まります。値段が付かない中古機器については価格を10％ずつ下げますが、それでも値段が付かない場合は海外マーケットでリサイクル販売します。
12月からの１カ月間で約200商品、約800万円が中古事業部の売上げになりました。従来の方式に比べて約10％増の社内売上げです。値段が付かなかったのは11品でした。
――値段が付かない中古機器の行き先は？
上田 イラクやドバイ（アラブ首長国連邦）、カンボジア、フィリピンのリサイクルマーケットです。１年間の製品保証を付けています。日本製品のニーズは高く、今後も販路開拓に取り組む考えです。
中古機器の売上げ構成比が３割に低下
――「競り」を導入した理由は？
上田 これまで各店舗では中古事業部から買い取った中古機器に利益を上乗せして販売価格を設定していましたが、マーケットリサーチなどを行わないため、市場ニーズや市況の変化に十分に対応しきれていませんでした。店頭の価格が客が希望する価格と大きくかけ離れてしまった。こうした環境の変化に対応するため、競りの仕組みを導入しました。
――具体的にどのような問題が顕在化したのか？
上田 仕入れから５年を経過した滞留在庫が徐々に増えてきました。店頭価格がネット通販や他社より高いことを放置してきた結果と言えます。実際、中古機器の売上げ構成比は下がっています。以前は70％程度でしたが、現在は30％を割っています。10年以上前は中古機器の粗利率は80％を超えていましたが、いまは58％程度まで下がっています。
確かに会社規模が大きくなり、スケールメリットを活かして新品の価格交渉力が高まったことで、新品の取扱い量が増えたこともありますが、このことを言い訳にはしたくない。
競りの仕組みと併せて、買い取った中古機器の洗浄台数を１時間あたり３台から５台に増やすなど生産性向上に取り組んでいます。買取り担当者の目利き力を高めるトレーニングも始めました。買取り点数をこれまでの２倍に増やして、国内と海外マーケットへの供給力を高めます。
市場競争にさらし現場力を引き上げる
――現場にどのような変化が生まれることを期待するか？
上田 店舗間に競争意識を芽生えさせることができます。これまでは口を開けて待っていれば良かったが、今後は各店舗の責任者が経営者目線で収益を考えながら、買取り価格や店頭価格をどうするか、自分たちで判断することが求められます。市場競争にさらされることで現場の力が育っていくはずです。
――市場ニーズを押さえた売れ筋の品揃えが増えれば滞留在庫は減少する。
上田 競り導入のメリットはそれだけではなく、いままで気づかなかった商品の掘り起こしにもつながります。たとえば「パンラック」は買い取っても売れないと思って店舗には出していませんでした。今回初めて競りに出品したところ、ある店舗が競り落としました。実はパンラックは新品なら５〜10万円はするそうです。その店舗は中古のパンラックが売れることを知っていた。買取り担当者も「今後は積極的に買い取ってこよう」となるわけです。こうした新たな気づきを社内で共有し、蓄積することができます。
今後は店舗と本社がせめぎあいながら競争力を高め、利益を生み出していくことをめざします。