ラショナル・ジャパン、居酒屋業態に焦点

    焼き手羽先の大量調理を実演した

 スチームコンベクションオーブンの専門メーカー、ラショナル社(本社ドイツ)の日本法人ラショナル・ジャパン(納土弘史社長)は居酒屋業態を対象にしたイベントを都内のホテルでこのほど開催した。およそ100名の来場者を前に、自社のスチコン「セルフクッキングセンター」を使った調理デモやパネルディスカッションを通じて人手不足や厨房で抱えている課題の解決策を披露した。
 デモンストレーションでは、焼き魚や焼き野菜、冷凍ピザ、ねぎの肉巻き、チャーシューなどの居酒屋メニューを同時に調理し、匂い移りしない特徴や、アルバイトなど調理経験の浅い人でも均一な仕上がりになることを示した。実際の店舗では次々と時間を空けて注文が入り、調理途中のスチコンの扉を開閉することで庫内の温度が下がる場合もあるが、センサーが感知して調理時間を自動的に延長し、プログラム通りの仕上がりになる仕組みも紹介した。
 同社の独自システム「コネクティッドクッキング」はクラウド上で厨房とデバイスをつなぐシステム。複数店舗に同じメニューを瞬時に登録し、稼働状況を把握することができるため、多店舗展開しているユーザーからは高い評価を得ているという。

年間約164万円の人件費削減に

    スチコンの導入メリットについて
    説明する井上氏(右)

 ユーザーを代表して、北海道で「焼き牡蛎」と「焼き手羽先」を看板メニューにしている居酒屋「牡蛎喰家来(かきくけこ)」の井上公司氏が登壇し、スチコンを導入して約164万円の人件費削減につなげた事例を紹介した。
 同店はスチコン導入を前提とした新業態で、昨年10月に既存の居酒屋をリニューアルして1号店を開業、直近で3店舗に広げた。メニュー100品のうち、約3割を小型タイプのスチコン2台で調理し、売上げの半分を占めているという。以前の店では5人で運営していたが、スチコンを導入したことで4人に削減した。1人当たりの時給が900円で、1日5時間勤務し、365日に換算すると約164万円になる。
 今年6月、愛知県で開催された「手羽先サミット2018」で金賞を受賞したことも追い風となり、7月の売上げは「跳ね上がった」(井上氏)。
 井上氏は「メニューを同じ仕上がりにするにはスタッフの教育時間が必要だが、スチコンを使えば誰が調理しても均一になる。メニューの画像が表示されるため、外国人従業員との言葉の壁もなくなった」と語った。焼き手羽先を実際に調理し、参加者に仕上がりを披露した。

昨年の売上げ14.3%増911億円

 ラショナルグループの2017年の売上げは前年比14.3%増911億円で、13年の599億円に対し、312億円伸びた。納土社長は「スチコン市場は飽和状態と言われることもあるが、まだ成長期の真っただ中にある」との認識を示した。
 日本では10社程度がスチコンを製造しており、ラショナル・ジャパンは国内市場で半数以上のシェアを持つ。15年の業態別の売上げ構成比はスーパーの惣菜向けが23%と最も大きかったが、16〜17年は飲食店の導入を急激に伸ばし、16年35%、17年37%と最大顧客になっている。日本の厨房サイズに合せて16年末に発売した奥行555mm、幅655mm、高さ565mmの小型タイプ「セルフクッキングセンターXS」が寄与しているという。