塩水港精糖はグルクロン酸の工業的生産技術の開発に成功した。グルクロン酸は肝臓機能の改善、疲労回復を早めるなどの機能があるとして、国内外で食品や栄養ドリンクなどに使用されている。既存の製造法では環境面で課題があったが、強酸を使用しない安全、低コスト、簡便な製造技術を確立した。
グルコースを微生物発酵により直接グルクロン酸に変換して、菌体除去、脱塩・脱色、限外濾過、濃縮、ラクトン化してグルクロノラクトンの結晶を回収する。この製造法に関連して開発した微生物は、菌体内に酸化酵素系を持ち、特異的にグルクロン酸を生成するという。この微生物をグルコースに作用すると、従来法に比較して驚異的な割合でグルクロン酸に変換する。その後の工程はでん粉糖化工場や精糖工場で用いられる工程であり、簡単にグルクロノラクトンの結晶として高収率で成果物を得られる。
原料のグルコースはでん粉から容易で安価に得ることができ、新規製造法による製造コストは従来法と比べ大幅に低減できる。また、硝酸や硫酸といった強酸を用いることもなく常温、常圧で反応が進行するので、特殊な反応装置を必要としない。さらに「有毒ガスの発生はなく、廃棄物もほとんど発生しない環境にやさしい製造法」(同社)という。従来の製造法では、でん粉を原料として硝酸や硫酸などの強酸を使用する合成法で製造し、安全性、回収率、廃棄物処理など環境面で課題を抱えていた。
グルクロン酸は肝臓機能の改善、解毒作用の促進、疲労回復を早めるなどの機能があるとして、国内では医薬品や医薬部外品の飲料製品に年間約100t、海外では、食品として栄養ドリンクに年間1500tから2000tの使用量が推定されている。
「今後も世界的規模で健康への関心が高まり、特に“疲労を科学する”取り組みが盛んになり、グルクロン酸の世界需要は今後も確実に伸長することが予測される。この新製造技術はグルクロン酸の研究や製造・販売者だけでなく、消費者からも高い評価が得られるものと期待している」(同社)としている。