田中マネージャー
世界中の食品トレンドをリサーチしているマーケティング会社Innova Market Insights社(オランダ)の田中良介マネージャーは、独ケルン市でこのほど開催された食品見本市ANUGA(アヌーガ)で「世界の食品業界のトレンド トップ10」をテーマに、世界の消費ニーズの変化や商品開発の動向について解説した。アヌーガ会場で日本語によるプレゼンが行われたのは初めて。田中マネージャーは「海外のトレンドは数年後に日本市場に波及する。輸出企業だけでなく、国内展開する企業も先にトレンドを押さえておけば商品展開が有利になる」と強調する。
「スマホで撮影した商品や食べ物をSNSを通じて情報発信できるようになったことで、目新しいフレーバーやパッケージ、原材料を次から次へと求める傾向が強まっている。
パッケージにディスカバリーと表示した商品は世界で年平均17%増えている。発見、発掘、再発見というメッセージに消費者が響き始めた。ネスレはルビーカカオを使ったキットカットチョコレートをディスカバリーのメッセージを付けて販売している。
また、最近のトレンドとして屋台の味や地元の味をテーマにした『ストリートフード』をうたった商品が伸びている。極端な例ではあるが『シークレットシーズニング』として、隠し味に何を使っているのかわからないロブスターのレディミールや、肉ではなく、スイカをグリルした商品など意外性をねらった商品が伸びている」
「代替食というと日本ではサステナビリティの観点で見がちだが、多くの人は健康を考えて代替食を求めている。ヴィーガン食品は年平均で33%の伸びを示す。これはヴィーガン志向の人が増えているわけではなく、ヴィーガン商品が伸びていることを示している。つまりヴィーガン以外の人が健康志向から買い求めている。
肉や乳製品に替わる良質なたんぱく源として、エンドウ豆を使ったソーセージ、コオロギパウダーを使ったスナックバー、カリフラワーを使ったピザや野菜を使った低アルコール飲料などがある。
『ウォーターレンティルズ』という植物を使ったブリトーは市場にまだ出回っていないが、未来のプロテインと言われている。
日本でもプロテイン需要が高まってきたが、日本の場合は高プロテインをうたっている。海外はクオリティをうたい始めた。どのような原材料を使い、どのような手順で作っているのか、吸収度合いはどうか。日本でも次の段階はクオリティに進むはず」
「サステナビリティをビジネスにどうやって落とし込むかが重要。たとえばひよこ豆を煮た後にこれまで捨てていた煮汁を使った、玉子未使用のビーガンマヨネーズがある。日本の場合は食品残さを使って『リサイクル』したことをアピールするだろうが、世界は『アップサイクル』を強調する。残り物ではない、スーパーフードを発見したという言い方でアピールしている」
「1日3食文化が崩壊し、4〜5食を取り始めている。現代人は忙しくて食べる時間がないため、スナックの役割が重要になってきている。そのうえで健康的なスナックを摂取したいという人が増えている。野菜や果物ベースの健康スナックが続々と登場している。たとえば椎茸やマッシュルームを使ったスナックがある。
さらに、これまでスナックとして食べてこなかった料理を使った商品が出始めている。中東の伝統料理である『フムス』をサンドしたビスケットはヨーロッパ各国で発売されている。このほかエンドウ豆と西洋ねぎの無添加スープにポップコーンをセットした商品や、アボカド入りのスナックヨーグルトなどもある」
「ベンチャー企業は大手より情熱があって動きが早い、フェアトレードなど社会性にも関わっている。そう考える人が多い。実際、米国のビヨンドミート社やインポッシブルバーガー社などは設立10年程度のベンチャーだが、リスク覚悟で商品開発に挑戦している。
一方でネスレやダノン、ユニリーバなどの大手企業は投資育成機関を立ち上げ、ベンチャー企業に積極的に出資している。これがうまくかみ合っている。日本でも食品ベンチャーが出てくれば、新しいトレンドを取り入れて、イノベーティブなことに挑戦する流れが生まれるだろう」
「世界の食品業界のトレンド トップ10」