東レは食品飲料やバイオ分野向けに高耐久性の中空糸膜モジュールを開発し、このほどサンプル提供を開始した。精製・濃縮工程で使用する。食品分野の濃縮工程で使われている熱濃縮法に比べてCO2排出量を大幅に削減できるという。本格的な量産化をめざす。
中空糸膜は分離性に優れているほか、面積利用の効率が高いため、水など液体のろ過に広く使われている。特に東レの中空糸膜は独自の高強度PVDF(ポリフッ化ビニリデン)中空糸膜技術によって高い耐久性と分離性を実現し、水処理分野での導入実績が多い。
今回は高強度の中空糸膜技術を活かし、新たに外圧式のクロスフローろ過モジュールを開発した。クロスフローろ過は一般的な膜ろ過方式の1つで、被ろ過水を膜の表面に対して平行に流し、濁質が堆積しないようにできる。このろ過方法を使った外圧式モジュールは食品分野で従来から使われている内圧式モジュールに比べて圧力損失が1/3で済み、これまでろ過が難しかった高濁度、高粘度の液体についてもろ過や濃縮が可能となる。これにより、従来の熱濃縮法に比べてCO2排出量を8割以上削減するという。
また、膜面積の大型化の技術で膜モジュールの本数を減らすことができる。50%の省スペース化だけでなく、洗浄・設備コストを20%以上低減する。
さらに、蒸気(125℃)や温水(90℃)に対する耐熱性を持ち、熱殺菌や高温ろ過も可能。東レが行ったろ過テストでは安定したろ過性能を長期にわたって保持したほか、蒸気滅菌により20日以上も雑菌による汚染が発生しないことを実証した。
今後は国内外のエンジニアリング会社と協力関係を築き、幅広い用途展開を進める。
外圧式による低圧損の特徴とCO2削減効果