流通産業の改革プロジェクトに参画
  AIファシリティ企業の機能発揮
    フクシマガリレイ 専務取締役営業本部長 福島豪 氏

    福島専務

 冷凍冷蔵機器メーカーのフクシマガリレイ(大阪市)はAI技術を使って流通産業の構造改革を進めるリテールAIプラットフォームプロジェクト「リアイル」に参画し、AIショーケースの社会実装化を加速する。
 これまで鮮度管理や省エネを追求してきたが、新たに欠品自動検知や動線分析、リコメンド機能などを持たせ、スーパーマーケットのデジタル化を通じて店舗の活性化と買い物環境の改善を実現する。
 福島専務は「AIファシリティ企業」への変革を打ち出し、「チャレンジングな事業だが、将来の大きな軸に育てたい」と意欲を示す。

小売業がもうかるAIショーケースを開発

AIショーケース、上部のリテールAIカメラで欠品
検知などを行う

 ――今回のプロジェクトはスーパーを展開するトライアルや日本アクセスなど異業種5社と連携して進めている。
 福島 当社は国内・東南アジアのスーパーなどに冷凍冷蔵ショーケースを販売していますが、近年は競合他社との価格競争が激しい。従来の鮮度管理や省エネだけでなく、今後は商品が売れる、店舗がもうかるショーケースを製造していくという発想の転換が必要です。それがAIショーケースだと考えます。

 店舗のデジタルトランスフォーメーションで店舗自体をメディア化し、活性化につなげる。当社はこのリテールAIの普及に必要なインフラ構築とメンテナンスを担います。最終的には買い物客がスーパーで楽しく買い物ができる流通情報革命を実現することが我々の使命です。

 ――実証店舗の「トライアル長沼店」(千葉市)が4月24日リニューアルオープンする。
 福島 長沼店ではAIショーケースを約10台稼働させます。ショーケースにはリテールAIカメラや電子棚札、デジタルサイネージ、内蔵ビーコンなどのIoTデバイスを搭載します。

 欠品検知や人流検知、商品検知を行い、自動発注連動、ダイナミックプライシング、パーソナライズサイネージ広告などによる効果を検証します。内蔵ビーコンは買い物客がショーケースに近づくとスマホに商品情報を送ることができます。スマートレジカートと連動して特売コーナーの情報を提供することも可能です。

 レジカートのインフラ構築とメンテナンスは当社が請け負います。さらにトライアルが持つ顧客データを活用して需要予測を行うことも考えています。

新本社屋にAIストアの体験施設を完備

    スマートレジカートとの連動も進める

 ――IoTによる温度管理はすでに各社進めている。「リアイル」は一歩先を行く? 
 福島 買い物客がドキドキ、ワクワクしながら買い物を楽しめることと同時に小売業の売上げや生産性を上げる。こういう世界観を作っていくことが「リアイル」の目標です。

 今回のプロジェクトは当社にとってチャレンジングな事業ですが、将来の大きな軸に育てたい。当社は冷凍冷蔵機器メーカーから「AIファシリティ企業」へと進化します。
 
 AIファシリティ企業としては、ハードを提供するだけでなく「リアイル」のエコシステムの構築も重要と考えます。
 昨年12月に竣工した新しい本社屋にオープンイノベーション拠点の「MILAB(ミラボ)」を開設し、リテールAIを発信、検証する店舗「MILABストア」を設置しました。

 これまでに小売業、メーカー、卸企業の関係者ら3000名以上が訪れ、レジレス決済やデジタルカートでのレコメンド広告、デジタルサイネージでのアドレサブル広告(顧客データを活用したターゲティング広告)、欠品検知、自動発注を実体験しています。

 ――冷蔵ショーケースの市場の見通しは?
 福島 価格競争が続くでしょう。それを避けるために省エネと環境対応を進めて、そのうえでAIショーケースや、(AI技術で店内空調を制御する)「ガリレイエアテックシステム」などを使って買い物環境の改善に貢献していきます。成長が非常に楽しみ。(AI技術を使って)ここまでサポートできる冷凍冷蔵機器メーカーは他にないでしょう。この強みをしっかり磨いていきたいと思います。

(ふくしま・ごう)1977年大阪生まれ。2005年福島工業(現フクシマガリレイ)入社。2010年関西支社大阪営業一部長、2011年執行役員東日本副支社長としてショーケース事業を拡大。2013年常務取締役東日本支社長。2014年専務取締役営業本部長兼東日本支社長。2019年4月から現職。営業本部長として営業部門を統括する。