厚生労働省は2015年の「職場での熱中症による死傷災害の発生状況」をまとめた。
昨年の熱中症による死傷者（死亡・休業４日以上）は464人と、2014年よりも41人多く、うち死亡者は29人と、前年より17人増加した。
建設業の死亡が最も多く11人、次いで警備業７人、製造業４人。この３業種で全体の７割以上を占めている。
熱中症で死亡した29人の状況をみると、WBGT値を測定していなかった（28人）、 計画的な熱への順化期間が設定されていなかった（26人）、自覚症状の有無にかかわらない定期的な水分・塩分の摂取を行っていなかった（17人）、健康診断を行っていなかった（13人） など、基本的な対策を取らない人の死亡が多いことがわかった。WBGT値とは気温に加え、湿度、風速、輻射（放射）熱を考慮した暑熱環境によるストレスの評価を行う暑さの指数のこと。
過去10年の熱中症による死傷者は、猛暑だった2010年に最多の656人となり、その後も毎年400〜500人台で高止まりの状態にある。
過去５年間（2011〜15年）の熱中症による死傷者数をみると、建設業が最も多く、次いで製造業で多く発生しており、全体の５割がこれらの業種で発生している。
食品製造業では、7月に発生、50歳代。被災者は７時50分頃から工場内で製品の副産物をフレコンバッグに充填する充てん機の操作を行っていた。
14時20分頃、しゃがんでいる被災者を上司が発見。被災者は背中に汗をかいていたが、めまい程度で大丈夫と言っていたため、エアコンがある撹拌操作室へ移動。自ら靴や保護帽を脱ぎ、水筒の蓋を開けて飲んだ。
14時30分頃、突然、被災者が床に崩れるように倒れ、119番通報で病院に搬送されたが、６日後に死亡した。
これを分析すると�ヾ超�省熱中症予防情報サイトによるWBGT値は31.5℃�⊃緤�や塩分の摂取は労働者任せ�Ｈ鏈匱圓紡个靴瞳鮃�診断結果に基づく対応が不十分�と鏈匱圓紡个靴毒�中症に関する教育は行われていなかった。
一般的に食品を取り巻く環境は低温に維持されていることが多いが、場所や作業条件によっては高温になってしまう。
今年の夏は、特に西日本で気温が平年並みか平年より高くなることが見込まれ、熱中症による労働災害が多く発生することが懸念されている。本格的な夏を迎える前に、自社の熱中症対策を見直しておくべきであろう。