清酒麹菌を活用、抗HIVペプチドをバイオ合成

 月桂冠は清酒麹菌を活用して抗エイズウイルス(HIV)作用のあるバイオ合成に成功、生産効率向上など実用化に向けて取り組んでいる。微生物の活用により、化学合成に比べ低コストで生産を可能にする技術。
 HIVの増殖を効率的に阻害するペプチドに対応する遺伝子を麹菌に組み込み、抗HIV作用のあるペプチドをバイオ合成し、その生産効率を向上させる研究を進めてきた。京都大学ウイルス研究所と科学技術振興機構(JST)は抗HIV活性を確かめる手法を確立し、効果の検証を可能にした。
 目的とするペプチドに対応する遺伝子に、麹菌由来のエンドグルカナーゼと呼ばれる酵素の遺伝子を付加することで、菌体内で作られたペプチドを酵素とともに菌体外に分泌させるようにした。この工夫で、目的とするペプチドを培養液1ℓあたり10mgまで生産することができた。
 同様のペプチドを化学合成する場合、生産の過程で発生する不純物の除去などで工程が複雑になり、生成する量も限られる。バイオ合成の場合は微生物により物質を作らせることから、化学合成の1/10から1/100の低コストで生産が可能。この研究結果を実用できれば、新たな治療薬として、HIV感染が深刻な国々に対し、低コストで抗HIV薬剤を供給することも期待できるという。