日本水産学会はシンポジウム「通電加熱による食品の加熱と殺菌技術の高度化」を30日開催し、最新の研究成果や問題点、機器の開発状況などの意見を交わした。
熱心に参加する食品開発の担当者ら
水産大学校の福田裕氏が「通電加熱(ジュール加熱)は電気抵抗体である食品に電気を流すことで起こる自己発熱が原理。水産練り製品用として世界に先駆けて日本で実用化されたが、その後パイプ式連続加熱装置の開発に伴い、チーズや味噌など均一系食品の加熱・殺菌技術として発展している」と説明。形状が不揃いで成分的に不均一な水産食品への導入は遅れていたが、「最近になり、通電加熱を利用した水産食品加工への実用化研究が進展している」として、ポテンシャルが高い技術であることを強調した。
農研機構食品総合研究所の五十部誠一郎氏は通電加熱を解凍に用いた場合について「マイクロ波では電磁波が材料の内部まで浸透しないため均一解凍は望めないが、通電加熱では使用する周波数が低いため内部までエネルギーが伝わり、解凍時間の短縮が図れる」と説明した。
昨年度公表された食品産業技術ロードマップには、高精度の温度制御手法による加熱工程の安定化とモニタリングについて記載されているが、「微生物の殺菌や酵素の失活、食品の各種成分の熱変性などを精密に制御、モニタリングすることで嗜好性や安全性、機能性などのニーズを満たす高付加価値な食品製造のシステムを構築できる。高電界の通電で、ベリー類など果実の加工中のβカロチンの抽出や、通電処理による中島菜の機能性向上にも期待できる」と見解を述べた。