アラスカ湾の水産物１万ｔを安定供給
調達力を強みに地域ナンバーワンめざす
�蝪截腺唯腺圍蓮‖緝充萃�役社長 都留城太郎氏
都留社長
水産加工会社がひしめく宮城県塩釜市に2005年設立したＹＡＭＡＴＯは、ベーリング海・アラスカ湾で操業する米国船籍から水産物を買い付け、業務用に輸入販売している。直接取引きで安定供給量を確保し、仕入れから選別加工、出荷まで一貫体制を構築。冷凍冷蔵の倉庫事業を合わせたグループ売上げは100億円を超す。近年は一般消費者向けのネット通販事業も好調で第２の柱に育ってきた。就任３年目の都留社長は「地域で圧倒的ナンバーワンをめざしたい」と力強く語る。
――輸入販売する原料魚の種類は？
都留 シマホッケや赤魚、マダラ、スケソウダラ、コガネカレイ、アブラガレイです。珍しいところではキタノメヌケ、アラスカ吉次があります。
ベーリング海・アラスカ湾で操業する米国の水産会社から直接仕入れています。原料販売のほか、中国の提携工場で骨取りフィレに加工してから輸入するなどアラスカ湾に特化した製品を扱っています。
中国の提携工場で骨取りフィレ加工する
――年間取扱量はどれくらい？
都留 取引先は全国の荷受け（卸売）や商社、仲介業者など。取扱量は年間１万ｔです。
仕入れから国内・海外での加工、出荷まで一貫体制をとっています。特に仕入れは直接取引きで安定供給量を確保できることが強みです。
日本近海は不漁続きですが、アラスカ湾は厳しい漁獲枠が設定されているため、漁獲量が安定しています。米国企業と付き合う第一のメリットはそこです。
――米国企業から安定調達できる理由は？
都留 長年にわたって信頼関係を築いてきたことに尽きます。魚価の相場が変動しても、しっかり話し合って着地点を見出しながら、安定供給してくれる代わりに、こちらも安定して買い付けることで信頼関係を維持しています。
元々は創業者である父（都留昌三会長）が遠洋漁業会社に勤め、川上の商売をしていたことが出発点です。父が培ってきたネットワークを活用して、川上に近い商売を続けることを大事にしています。
ワンフローズンのタラバガニが人気
――楽天市場などのネット通販も好調だ。
都留 一般消費者に向けた商売を一気通貫で行いたいという思いで始めました。
自社製品だけではアイテム数が足りないため、他社製品を仕入れ、取引先を広げています。取引先は地場の水産加工会社をはじめ、ノースイやマリンフーズなど大手企業も少なくありません。
――人気の高い商品は？
都留 ロシア産のタラバガニです。取扱量は年間約80ｔ。これも独自ルートで直接買い付けています。こだわりはワンフローズンのままお客様にお届けすることです。
タラバガニは船上でボイルした後に20�團屮蹈奪�で急速凍結されます。この後、通常は一肩ずつ定量でパックできるよう加工場で解凍しますが、当社は解凍せず、ピックを使って手作業でバラしていきます。
ワンフローズンで提供するタラバガニ、手作業で
ていねいにバラすことで本来のおいしさを維持している
ワンフローズンで提供しているのはおそらく当社だけでしょう。凍ったままバラすため手間がかかるうえ、カニ脚が肩から外れてしまうこともあり、正直見栄えは良くない。それでも、食感やおいしさには絶対の自信があります。当初クレームは多かったですが、今はお客様にていねいに説明して理解をいただいています。
――確かにレビューは高評価が多く、楽天市場では検索上位に位置する。
都留 2013〜2016年は楽天市場の海産物ジャンルでショップ・オブ・ザ・イヤーを連続で受賞しました。売上高と購入者のレビューで審査され、総合１位を獲得しました。ただ、ここ数年はタラバガニの価格高騰が激しくて売上げが減少し、１位は取れていません。
そこで年間を通じて水産加工品を楽しんでもらえるよう商品の改廃を進めながら、バリエショーンを広げることを優先しています。現在は150品目ですが、目標は200品目です。
地域で圧倒的ナンバーワンをめざす
――入社は６年前、主にどのような業務に携わってきた？
都留 ネット通販の責任者（店長）として、取扱い商品の拡充のほか、顧客サポートやクレーム対応の体制整備に取り組んできました。そこで学んだのは、魚を獲ってきて売るだけでは商売が発展しないということ。
商品配送の遅延や誤出荷などをいかに減らすか、相場を踏まえて価格設定をどうするか、お客様が何を求めているかなどを常に考えることの大切さを感じました。
ネット通販では北海道猿払村から直接買い付けた
刺身用のホタテ貝柱を取り扱っている
――若いスタッフが増えており、会社に勢いを感じる。今後の展望は？
都留 従業員数はグループ全体で約60人に増えました。人材教育に３年前から取り組み、社内評価制度を今年度から本格稼働させています。人材確保では東京海洋大学からインターンシップの学生を受け入れ、本採用につなげています。
経営については拡大路線を取る考えはありません。時代に合わせて売り方や商流を変え、緩やかでも堅実に成長発展させることが私の役目。従業員一人ひとりがこの仕事は誰にも負けないと言えるほど技能や知識を身に付け、深く掘り下げ、全員でスペシャリストの集合体をつくる――。従業員たちとは、そういう思いを共有しています。
目標は規模が小さい分野の仕事でも「地域で圧倒的ナンバーワン」を獲得すること。塩釜を制したら次は宮城でナンバーワンを取り、東北、そして全国へとステップアップしていきたいです。
（つる・じょうたろう）1970年宮城県塩釜市生まれ。創業者である都留昌三会長の長男。学卒後、防衛庁（現防衛省）に装備品を納める専門商社に入社。2013年ＹＡＭＡＴＯ入社。ネット通販事業の拡充に取り組む。2017年社長就任。趣味は剣道。宮城県立仙台三高時代には県選抜で国体出場。現在は仙台市や塩釜市の道場で毎週２回稽古に励む。法政大学経営学部経営学科卒。48歳。