阿部万寿雄の「食の安全」と「ものつくり」 −27−
新商品開発(1)開発へのこだわり

 物の売れない時代であればあるほど、売上げは減少し、当然利益も少なくなってくる。企業は生き残るため、何としてもでも売上げを伸ばし、利益の獲得を実現しなければならない。
 そのために従来の生産品目に依存するのでは先細りになる、新しく、より付加価値の高い商品を開発することで、売上げを増大させ、収益を新たに確保することを最優先しなければならない。

新商品開発へのこだわり

(1)開発テーマ
 新商品の開発テーマは企業の長期戦略に合わせて取り組む必要がある。そこで新製品開発に当たっては「何をやるか」を絞り込むことが最重要となる。市場性のある商品開発は効率的な開発時間とコストが求められる。

ニチレイ「アセロラ」ソフトドリンク

 ○戦略的開発は時代のトレンドに対応してやや先(3〜5年)の市場を読んで開発する商品。「新規市場」×「新技術」の範中から手がけた商品として、ソフトドリンクの「アセロラ」がある。新規事業として企業体質の改革を推進し、ブラジル事業の転換など大きく貢献した。
 ○戦術的商品は現状の市場で顧客や第一線の営業の要望に合わせ、比較的短期にタイムリーに開発を行なう商品開発である。「既存市場」×「新技術」分野の商品として現実的に成功率の高い開発となる。具体的にはレンジ対応の「サクサクのコロッケ」などが営業サイドからの強い要望に応えたものである。

(2)商品コンセプト
 商品コンセプトは商品開発の全体を貫く統一的な考えであり、言わば開発の憲法みたいなものである。プロジェクトチームで初期の段階に十分議論して取りきめて置く必要がある。

最近の北米の冷凍えびフライ「ポップコーン海老」

 ○食品の開発テーマには生活の現場からの視点が必須である。主婦の日常生活に密着したテーマ、例えば「弁当のおかず」であればシリーズで多数のアイデアが浮上する。
 ○大型商品の開発には長い時間と組織的なスタッフの活動が必要となる。開発過程で困難な壁に遭遇すると、安易な方向に逃げたくなる。明確なアイデアの方向付けがあれば徹底的にこだわりの新商品開発が実現し、可能になる。