アンリツ産機システムが開発した食品工場の生産ライン用「総合品質管理・制御システム」がコンビニエンスストア向けのベンダー工場で導入が進んでいる。本格展開して3年ほどで、全国80以上の工場が導入している。複数社にまたがる各工場の製造工程を、「統一化」することに役立てている。
システムの構成例
同社が手がける総合品質管理・制御システムの名は「QUICCA(クイッカ)」。このソフトをパソコンにインストールし、検査機など各機器と接続すれば、生産データの自動記録や生産状況のモニタリング、生産に関する問題点の解析など、品質を管理するための具体的な手段を割り出せる。
データを蓄積するシステムは「全数データ収録システム」として、数年前から手がけていた。金属検出機やX線異物検出機、重量検査機など各検査機を主力とする同社にとっては得意とするところだった。
その蓄積したデータから生産機器の稼働状況を把握するシステムを前バージョンである「QUICCA・KX9001シリーズ」(2006年)で構築、そこからさらに機能を進化させ、現バージョン「KX9002シリーズ」(2010年)へとつなげた。
しかし、開発当初は導入が思うように進まなかったという。食品工場では生産機器や検査機器など、生産に直結する投資には早急に動き出しても、この種の間接的ソフトへの投資は「次の更新時に」と後回しになることが多い。しかも品質管理や制御システムなどは各食品メーカーが自社で独自に構築している。ノウハウも各社それぞれにある。
このシステムを特に必要としている業態はどこか――。コンビニエンスストア(CVS)向けに商品を製造しているベンダー工場がそれだった。
CVS向けに製造を請け負う食品メーカーは1社に限らず、複数のメーカーで担当していることが多い。しかも、各ベンダーとも工場は全国に展開している。だが、おにぎりや弁当、調理麺、サンドイッチなど各商品のブランドは1つに統一されて店頭に並んでいる。CVS本部としては、何とかして商品を統一したいという切実な思いがある。商品を「統一」するためには、レシピはもちろん、工場での各オペレーションを「統一」することが欠かせない。
「QUICCA」では具体的にどんなことができるのだろうか。
まずは、生産状況の分析と診断。質量値の平均値や標準偏差などは、統計表示ウィンドウで一覧できる。グラフで表示させることもできる。生産状況の異常を察知しやすく、機器の運転調整などの対応も容易になる。質量値をヒストグラム表示させれば、生産傾向が一目で把握できる。
統計値やグラフをレポート形式にまとめる機能もある。生産統計値やX線異物検出機の検査記録などをレポートとして出力すれば、出荷先への報告や、日々の業務報告に役立てられる。
ここでいう出荷先というのはセンターで、そのセンターを束ねているのがもちろんCVS本部。本部としても全国複数社にまたがる各工場からの報告が、同じ形式で上がってくるので、わかりやすく、次の対策を講じやすい。
「生産状況の分析と診断」レポートの例
トレーサビリティを構築できるのも強み。それにより、クレーム対応の信頼性とレスポンスを向上できる。
検査機器の各種の測定データや動作来歴を、時刻と紐付して記録し、一元管理できる。消費者や取引先からのクレーム対応時は、データ出力ウィザードから目的に合った検査記録を抽出し、自社工程に問題がなかったことを確認できる。
ベンダー工場は365日24時間稼働している。しかも毎日3便制(便ごとにロットとしている)で現場はめまぐるしく動いている。抽出したいデータをロットや日時で検索できるので、そのオペレーションも煩わしくない。
発行した検査証明書の例
(※アンリツ産機システムが検査内容を保証するものではない)
日常の動作確認記録を確実なものにする。
CCP管理では、金属検出機の動作確認作業を必要とする。「QUICCA」を活用すれば、動作確認を行った時刻や品名、作業者の情報を自動的に記録できる。記録の記入漏れや改ざんなどを防ぐことにより、日報の信憑性が向上する。また、最近の金属検出機は正しい確認作業が終了しないと運転開始できないように設計されている。
ベンダー工場では様々な立場の人が働いている。「動作確認が面倒」とし、それを怠る人もいないわけではない。
バーコードリーダーを活用することで、作業担当者の認識や、便ごとの管理が可能となり、検索も簡単になる。
取引先に提出できるように、検査証明書を発行できる。これはCCP管理手法によって正しく運用された検査機器で検査された生産品であることを示す。
自社の品質管理体制のPRにも役立ち、取引先からの信頼度向上にもつなげられる。書式はカスタマイズできるが、検査機器の記録は変更できない。
大手CVS向けのベンダー会社の関東にある主力工場が「QUICCA・KX9002シリーズ」の1号機を導入したが、それを皮切りに同じCVSに商品供給する他社のベンダー工場も順次導入していった。その数は現在80工場以上。CVS本部は引き続き、全国の各工場に導入を呼びかけているという。
「QUICCA」はこれで完成形ではない。「金属検出機やX線異物検出機の機能は年々更新している。当然、QUICCAも進化していかなければならない。“こんな機能はできないか”と要望もいただくようになった。その期待値は大きい」(アンリツ産機システム)としており、さらなるバージョンアップをめざす。