野口正見の「5S活動による食品工場改善」 −27−
役員パトロール

 社長以下役員が巡回部署を決めて5Sパトロールを4カ月ごとに実施した。点検結果を評価し、指摘事項は5S点検指示票にまとめて5S委員会に報告した。評価点は表彰の項目とした。
 社長以下役員はなかなか現場を視察しない。このため5S活動を切り口にして役員パトロールを実現させた。これにより、現場がきれいになっていく状態を確かめられ、また、感心し、その場で従業員を褒めるようになった。褒められた従業員は嬉しさを表す。
 5Sの進捗が時間を追って進んでいくのに意を強くしていた。遊休資産の確認、不良在庫も確認し、ただちに処分などの指示が出来た。これらは資材倉庫や外回りの機械室、倉庫に潜んでおり、会社の資産管理の杜撰さを経営陣に認識させた。
 特に遊休機械などは、社長など上層部の人間が購入し、使い物にならなくなっても、現場はその処分を意見具申しにくいものである。パトロールで確認した場合、その場で適切な指示を出し、5S活動の推進に効果を上げた。
 建物、工場の外回りも経営陣は普段見回らないので、パトロールの巡回経路に組み入れた。それは、会社内から見ると外回りは「裏」の認識であるため。しかし、外は世間から見ると「表」である。
 草は茫々とし、空き缶や煙草の吸い殻、ビニール袋のゴミなどが投げ入れられている。「ゴミはゴミを呼ぶ」とは、まさにこのこと。
 植木は伸び放題で、近隣に枯葉を撒き散らかしている。このような状況を経営陣は目の当たりにする。得意先が見たらどう思うか? すぐ総務部を中心に整備の計画が立てられた。
 このように、役員パトロールは従業員との極めて有効なコミュニケーション手段である。