“共創”掲げ、原材料メーカーとともに成長
石井食品 八千代工場(3)

 おせち料理は保存性や見た目の華やかさ、色合いなども求められるが、一つひとつの食材と製造プロセスを見直すことで、無添加調理の新たなおせちが完成した。その完成には原材料メーカーなどの協力が欠かせない。共にモノづくりをし、成長につなげようとするメーカーの底力を感じた。

 素材の良さがおいしさにすぐ反映する無添加調理だからこそ、素材選びが大切。同社では社員が直接現地に出向いて、育て方や品質を確認したものだけを使用する。おいしい旬のものを使用するため、時期によって産地を変えている。
 加工原材料についても、使用されている原材料の情報を確認するとともに、定期的に加工工場へ出向き、工場点検を実施している。「使用する一つひとつの原材料を自らの目で確かめるとともに、加工メーカーの協力を得ることで、お客様に満足していただける商品作りをめざしている」という。
 原材料については、毎年「原材料規格書」の提出を求める。ここには使われている原材料の基原原料と原産地、食品添加物については加工助剤までの記入を求めている。
 製造工程なども詳細に記入してもらい、定期的に実施する工場点検では「原材料規格書」どおりに生産されているか、生産管理状況に問題ないかを同社独自の点検表に基づいて確認している。

成型機から次々と出てくるミートボール

 同社の姿勢を伝えるためには原材料メーカーとの意思疎通が欠かせない。奥乃匡品質保障部総括マネージャーもここ3年連続で数の子やイクラを加工する水産会社を訪問している。1年目のときは「ここまでやるか」と、その原材料に求める徹底ぶりに驚かれたという。
 しかし、その相手先も「難しい」と言って追い返したりはしない。同社がめざすものに共鳴し、加工を承諾したのだ。
 「私たちのスタンスを理解していただける加工メーカーは必ずいます。そういった方たちと出会えることは非常にうれしいですね」。奥乃総括マネージャーは笑みを浮かべる。
 その笑みもこれだけでは終わらない。2年、3年と付き合う過程で「素材にこだわり、無添加で加工することで自分たちにも自信がついた。このノウハウを生かして自社ブランドを立ち上げることができた」と相手先から声をかけてもらったという。自社と原材料メーカーがともにレベルアップしていると実感した瞬間だったに違いない。

昆布巻きの包装ライン

 無添加調理への挑戦。主力のチキンハンバーグからその試みを開始して16年が経過した。昨年からはおせち料理にも謳っている。「初めは難しいと感じていたが、“ムリ”だと初めから決めつけるわけにはいきません。挑戦しなければ何も始まりません」。
 ハンバーグやミートボールに使うパン粉は大手パン粉メーカーと協議し、小麦粉や砂糖、イースト、食塩だけの、乳やショートニングを使用しないシンプルなパン粉を専用で提供してもらっている。
 おせち料理も同じで、数の子やイクラの加工メーカーのように新たに加わった協力会社との関係を築き、強固なものにしている。
 「原材料メーカーの協力がなければ、私たちの無添加調理は成り立ちません。しかし、単純な協力関係で終わるのではなく、双方が同じ目標を掲げて共にモノづくりをする――まさに“共創”の関係であり、共に成長できればと思います」(奥乃総括マネージャー)と語る。(シリーズ終わり)

栗きんとんの重量をチェックするスタッフ、色・形も基準を満たしているかをチェックしている

 フードエンジニアリングタイムス(FEN)2013年12月25日号掲載