中国の2大冷食メーカーが機械化した新工場を建設中

 中国の調理冷凍食品を代表する2大メーカー、三全食品思念食品は、冷凍食品の大型新工場を河南省鄭州市に建設している。両社とも旧工場が手作り中心であるのに対して、新工場は機械化を進める。原料の処理から加工、凍結、包装までを自動化。また保管・管理・物流の合理化を図るため、両社とも大型立体自動倉庫を併設する。
 水産タイムズ社冷食タイムス編集部が独自に現地を取材し、最新の動きをつかんできた。

 両社は中国国内で販売する市販用冷凍食品が主力。2社の餃子、ワンタン、湯圓、粽、中華饅頭などは、主要都市の大規模店舗に必ず並んでおり、両社の市場占有率は50%前後と推測される。成長著しい中国も昨年来の世界同時不況に見舞われているが、経済のプラス成長は変わらず、両社とも08年の売上高は「二ケタの増収」だという。

三全食品が建設中の冷食新工場
の一部(写真奥が自動倉庫)

 三全食品は本社近隣に約3億5000万人民元(約52億5000万円)を投じて餃子と湯圓の新工場をそれぞれ建設中で2010年完成を予定。生産ラインの機械化で年間10万tの生産能力を持つ。本社工場が人海戦術による手づくり中心なのに対して、新工場は可能な限り機械化を進める。併せて大規模な立体自動倉庫も建設中だ。

 思念食品も2012年完成をめざして新工場の建設をスタートする。やはり原料処理から、餃子の包餡、包装まで自動化する計画。また2万5000t規模の保管能力をもつ立体自動倉庫も併設する計画で、考え方は三全食品と一緒。

 中国で3億元規模の冷食工場投資は極めて大がかり。また日本で10万t規模の生産能力を持つ冷食工場はない。
 両社とも欧米への輸出は5%程度あるが、対日輸出の実績は実質ゼロ。ただし以前から対日輸出許可の申請を続けてきた三全食品は「4月に日本の農水省が検査に来る予定だ」と新しい展開に期待を寄せているが、「申請しているのは旧工場で、当面は国内需要で手一杯」だという。

今後の課題は「業務用ルートの開拓」

 この大手2社が今後の課題として掲げているのが、「業務用ルートの開拓」。既にホテルやレストラン、ファストフーズなどの業務用分野も手掛けてはいるが、まだ一割にも満たない規模。両社とも「日本における冷凍食品発展の歴史をみれば、今後中国市場で大きく伸ばすには業務用市場の開拓が不可欠だ」と声を揃える。

 中国で冷凍食品を生産する日系工場が08年の天洋食品事件以降の一連の事故や不祥事で苦戦しているのに対し、現地資本メーカーの躍進振りは華やか。日系の輸出型工場も日本市場の低迷により中国国内での販売に注目はしているが、「即断即決でスピーディー、かつ柔軟な経営を実践する中国勢との競争はかなり厳しい」というのが現実だ。