ズボンを穿き替え、まゆげの落下防止策も
ヘルメット内のＩＣタグで行動制御、運営を大幅に改善
マルハニチロ�蝓〃嫁蝋�場 ＜下＞
マルハニチロの群馬工場（群馬県大泉町）は、旧アクリフーズ群馬工場として、2013年末に表面化した農薬混入事件とその後の対策、改善により、工場運営を大幅にリニューアルした。
特に事件発生で第三者検証委員会から指摘されたフードディフェンスに関しては、いま業界で最も厳しい管理をしている、といえる。品質保証の点でも大幅な改善により、グレードは大きく高まった。
帽子の中にヘルメットを着用している
工場に入るまでにいくつかの手順があり、これをクリアしないと誰であれ、入室できない。
白衣の上着を着用。ズボンを脱いで、白衣のズボンに穿き替え、ズボンから延びているインナーを靴下の中に入れる。上着の裾はズボンの中に収める。ズボンを穿き替えることで、着衣の中に不審物を入れて製造エリアに入室することを防ぐ。白衣姿に着替えを終えると、品質担当の女性が全身をチェックし、何も持っていないことを確認する。上着、ズボンともポケット類はない。
頭にフィットする形の薄めのヘルメットを着用し、その上から帽子。ヘルメットの内側天頂部に小さなＩＣタグが埋め込まれており、部屋の入退室行動などが管理される。ヘルメットは頭にすっぽり収まるので、違和感はない。ＩＣタグは小さな電池で作動、１年間持つ。
入室の際、頭部をセンサー部分に軽く近づけると感知音が鳴り、ランプが点灯してドアが開く。「導入テストの段階では工場内が静かだったので、感知音が聞こえたが、操業を再開したら様々な音で感知したかどうか、聞き取れなくなったので、ランプも設置した」（同社）。
携帯型のＩＣタグは落としたり紛失の懸念があり、移動中に保管携帯する場所が着衣の中、またはストラップなどが必要となるが、ヘルメットに内蔵したことで両手が空き、落とす心配もなくなった。従業員の責任の度合いや担当部署により、ＩＣタグで行動範囲は制限され、担当外のエリアには入れない。
製造室入り口で靴の底を洗い、小さなシートを眉毛に当てる。これで抜け毛混入を防ぐ。眉毛処理は１分間と決まっている。手指、爪の洗浄は30秒。入室の前後に全身のローラー掛け。
安全安心カメラ、事件前の５台を事件後は169台（昨年11月時）
工場入り口、まゆげ取を強調している
非常口は施錠しドアノブにプラスチックカバー、24時間警備している
２階製造エリア。ピザ、グラタン、フライ、コロッケ、ホットケーキなどのラインが並び、製品を次々生み出している。見学者と出会った従業員から「コンニチワ」、「いらっしゃませ」、「ご苦労様です」などの挨拶が交わされる。それぞれ言葉が違っているので「言わされた」感がなく、自然。マスクで細かい表情までは見えないが、目が穏やか。
１階、ピザ生地ライン。生地を延ばし、型抜きして発酵させる。ホイロ発酵エリアはオーブンで加熱。コンベアが流れる途中に製品が露出するコーナーがあるが、その左右に黄色い棒がタテに配置されており、露出しているところに誰かが近づくとセンサーが感知し、アラームが鳴る。カメラもチェックしている。
ピザソースの調合、加工エリア。ニーダーで製品ごとのソースを作る。
ピザのデコレーションエリア。生地の上にノズルからソースを出し、チーズをトッピングした後、コーン、ピーマンなどの具材を１ショットで載せる。さらにサラミソーセージなどを載せる。ここまでの作業は全てトッピングマシン。最後に２人で検品し、具材の補強などを行っている。その後、トンネルフリーザーで凍結。
ラザニア。焼き目なしはトレーに充てんして包装、凍結、出荷。焼き目入りは最後にオーブンで加熱し、焼き目を付ける。グラタンに入れるマカロニ等はコンピュータスケールで計量し、１ショットずつ充てんする。
製造ラインの近くにデジタル表示で「目標0000個、実績0000個」と「進度０％」。その日の生産計画と、その時点の到達度を示す。従業員は「残り〇個だな」と進捗状況がわかり、作業心理にもよい刺激を与える。（このシリーズおわり）
焼き目なしグラタンライン
露出部分は左右のセンサー（黄色のタテ棒）で制御
ピザクラストライン、製品が露出しているところはセンサー（黄色のタテ棒）で制御
ピザのトッピングをチェック作業
ピザの包装作業
すっきりしたレイアウトになった包装ライン