包装から売り場を創る
中村産業 代表取締役社長 中村 剛太郎氏(上)

 中村産業は新たなパートナー、ドイツ・シールパック社の包装機を携え、直接スーパーのバイヤーに訴求。彼らを刺激するような今までにない包装スタイルを提案している。包装機商社の視点から売り場の創造に全力を注いでいる。

      中村社長

 ――ドイツ・シールパック社の包装機を提案している。
 中村 当社がそれまで扱ってきた包装機に代わるパートナーを探すため、海外を廻っていましたが、ようやく納得のいく包装機を手がけるメーカーと出会うことができました。それがシールパック社です。2011年から正式に取り引きを開始し、以降日本のユーザーに同社製の包装機を提案しています。

 ――どこがポイント?
 中村 深絞り真空包装機「REシリーズ」は真空包装、ガスパック、シュリンク、スキンパックの4役をこなします。特殊な成型方法を採用したことによって包材のコーナーの強度が増し、より深く成型できます。食肉向けでは、ブロック肉や加工品、丸鶏のスキンパック、シュリンクパックも金型を換えるだけ。金型を交換するスピードも交換補助機を使えば、さらに速くなります。
 最大のポイントは構造が強固なことに加え、液晶パネルや空圧バルブ、チェーンなどは日本のトップメーカーの製品を搭載している点。それまで普及していた深絞り包装機では、各部品がその会社のものに限られているため、汎用性に乏しいものがありました。一方、シールパック社製機種の各部品は日本のメーカーのもので構成しているので、供給しやすく、メンテナンスや緊急の際などすぐに対応できます。

 ――主な納入先は。
 中村 販売開始が奇しくも震災があった年。1号機を東北のユーザーが導入したのを皮切りに、その後も震災からの復興途上にある東北の水産加工場で多くの引き合いをいただいています。日本に紹介してからまだ間もないのですが、他の地域のユーザーでも切り替え時に検討いただくようになりました。当社が扱う機種の中でも主力のシリーズに成長しています。
 東北の水産加工場では、煮魚を真空包装にするなど1つ手を加えた水産物の加工がトレンドになっています。それまで加工機械の導入がなかなかできなかったユーザーでも、補助金を活用して導入し、今までできなかった加工にチャレンジしています。

 ――シールパック社の他のシリーズは。
 中村 トレーシーラー「Aシリーズ」では生肉用などに新トレーを提案しています。トレーにガスバリア素材を含ませることで売り場での突出感をなくします。トップ素材も薄くして“テカリ”も抑えます。
 またトップシールなので、ゴミの量も減らせます。惣菜では電子レンジ対応のトレーとすることで食器への移し替えの手間を省き、簡便でエコな商品を提供できます。アルミトレーにも対応するので、そのままオーブンで調理する商品も製造できます。

 ――こちらも1台で様々な製造に対応できる。
 中村 数ある欧州の包装機メーカーの中でも、私がシールパック社を気に入ったのは、トレーシーラーの特徴である「インサイドカット」(最初にフィルムをカットしてから、トレーにシールする方式。フィルムはトレーの外周端の内側の位置でカットされる)をどこよりもきれいに仕上げる点です。より見栄えの良い包装デザインが可能となりました。
 本場の欧州はもちろん、韓国でも見られるようになりましたが、日本での導入事例がまだまだ少ないのがこのトレーシーラーです。「REシリーズ」とともに、この「Aシリーズ」も東北のユーザーに導入し始めていますが、それもここ2年でのこと。FOOMAなど大きな展示会で機械とともに、「Aシリーズ」で包装された商品をスーパーの売り場を再現して展示しましたが、大手スーパーマーケット各社のバイヤーから“この包装スタイル、欧州ではよく見かけるのに日本ではほとんど見かけない。しかし、最近だけど東北では見かけるようになった”と声をかけていただきました。この包装に気が付いてくれたことに、とても嬉しかったですね。

 ――スーパーも差別化した品揃えを充実させようと必死だ。
 中村 当社にもテーマがあります。それは“売り場を変える”、“売り場に直接訴える”こと。小売店の発言権が増し、製造現場にも直接働きかけている事例が増えています。我々が出展するような機械の展示会でも、食品メーカーだけでなく、スーパーのバイヤーも直接ブースを訪れるようになりました。
 そこで我々は何ができるのか。直接バイヤーを刺激するような今までにない包装スタイルを披露することだと思います。包装に関しては何十年も扱っているプロだという“自負”が我々にはあります。包装機商社という視点から売り場を創造できるのだ――そう思うと、エキサイティングな仕事はこれからもまだまだ続くのだと奮い立たせています。(次号へ続く)

千葉県松戸市の本社にあるテクニカルセンター

先月開催したジャパンパック2013に出展したシールパック社のトレーシーラー

 フードエンジニアリングタイムス(FEN)2013年11月6日号掲載