【年頭所感】
ロジスティクスの高度化により持続可能な社会の構築を
日本ロジスティクスシステム協会 遠藤信博会長

    遠藤会長

 世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症により、世界経済は大きな影響を受けている。ロジスティクスや物流分野においては、感染拡大防止に向けた数々の対策に伴い、サプライチェーンにも大きな混乱が生じ、また、消費者の行動変化によって、物流量が急激に変動し、需給調整や在庫管理等の対応に、今なお苦労している人は多い。

 持続可能な社会をめざすSDGsの17の目標には、ロジスティクスの高度化実現に関わるものが含まれている。このことからも分かる様に、ロジスティクス・物流そのものが、人間社会のサステナビリティを支える基盤であり、これに関わる我々ロジスティクス関連企業の努力による人間社会への貢献に大きな期待が掛けられている。

 当協会では、産業界の発展やSDGsの目標達成に貢献するため、2030年のロジスティクスのあるべき姿を「ロジスティクスコンセプト2030」としてまとめた。このコンセプトはコロナ禍においてなお一層、真価を問われるものであり、我々は引き続きこの実現に向けて、活動を展開していく。今年は特に、「サプライチェーンの進展」、「データ共有型のプラットフォーマーの育成」、「HRM(人的資源管理)の推進」等に注力する。

 「サプライチェーンの進展」については、ロジスティクスの定義を再検討し、ロジスティクスを経営戦略に位置付ける企業をさらに増やすことをめざすとともに、カーボンニュートラル社会や資源循環型社会を実現するサプライチェーンの構築に必要な「標準化」の一環として、JIS(日本工業標準規格)の物流用語の改定に取り組む。

 「データ共有型プラットフォーマーの育成」については、ヒトの生産性向上・モノの有効活用・環境負荷低減をKGI(重要目標達成指標)に掲げ、全体最適のためのプラットフォーム構築を目標に定めた「オープンイノベーションラボ(仮称)」を開設する。さらに、最新物流機器・システム・情報等のハードとソフトが一堂に結集する「国際物流総合展2021」を今年3月にAichi Sky Expoで開催する。万全な感染拡大の防止対策を講じ、開催に向けて準備を進める。あわせて、国内外問わず多くの関係者が参加できるようオンラインでのロジスティクスソリューションフェアの開催も検討していく。

 「HRM(人的資源管理)の推進」も重要。ロジスティクス・物流分野の課題が複雑化しているため、課題を解決できる高度ロジスティクス人材の確保や育成を重要課題として挙げる企業が多いのが現状。つまり、戦略的視点から人材を経営資源と捉え、開発、活用するHRMの推進が求められている。当協会は、多様化する人材育成ニーズに応えるため、階層別、分野別の各種講座やセミナーを開発し、集合型、オンライン型、それぞれの長所を活かした型式で開催する。加えて、国民生活や産業界におけるロジスティクスや物流の重要性や仕事としての魅力等を訴え、この分野を支える人材の裾野を広げるために、引き続き、学生のためのロジスティクス・物流研究プロジェクトの推進に積極的に取り組む。

 当協会は、今後とも、わが国産業活動と国民生活の持続可能な発展に向け、経済産業省ならびに国土交通省等、関係各省庁の施策と歩調をあわせるとともに、産・学との連携を強化し、全力をあげて課題に取り組んでいく。