電力使用量三割減対策が急務
倉庫改修に行政の財政支援を
東京冷蔵倉庫協会 会長 楡 敏秀氏

 計画停電により、冷蔵倉庫では荷役の作業時間が大幅に増えるなどの影響が出ている。政府からは抜本的な電力削減対策も求められている。東京冷蔵倉庫協会の楡敏秀会長に現状と対処等について聞いた。

             楡会長

 ――震災後、関東圏でも小売店は品切れ状態というアイテムが多い。
 楡 仮需要が発生し、棚から商品が消えました。これは物流が川下志向となった結果です。例えば、CVSでおにぎりが1個売れれば、翌日には棚に補充される配送の仕組みになっています。このライフラインを冷蔵倉庫は担っていますが、電力供給の融通を受けられません。東京23区や港湾地区では計画停電が実施されていませんが、都内でも八王子市や立川市などでは実施されており、不公平感が業者間にもあります。そこで当協会と関東冷蔵倉庫協会はそれぞれ東京電力に対し、冷蔵倉庫事業者への電力優先供給を要望する文書を先月24日に提出しました。

 ――計画停電で現場が被る影響は何?
 楡 実施地域の冷蔵倉庫では、荷役の作業時間が大幅に増えています。その原因のひとつは、現場と荷主で停電時間が異なることにあります。停電中は入出庫データを荷主が送信できず、現場は受信できません。この時間差が影響し作業がどんどん遅れ、エンドユーザーへの配送に遅延をきたしています。この対応策として、注文アイテムを絞り込んでいただき、事態を切り抜けています。

 ――電力使用量が増える夏場が心配では。
 楡 国交省からは夏場対策を要請されています。東京電力の電力供給量は昨夏のピーク時に6000万kwに及びましたが、現在の供給能力は4500万kwで約3割ショートする計算になります。全産業が監督官庁から、電力使用を3割削減する対策を早急に求められており、冷蔵倉庫業者も今月までに対策を打ち出さなければなりません。以前から、温室効果ガス排出総量削減の課題が課せられ、向こう5年で8%、10年で17%の電力使用量削減を求められていました。ところが今回はそれどころでなく、早期3割削減という難題です。冷蔵倉庫にとって電力は「原料」であり、それが抑制されては「製品」を作れません。

 ――どう切り抜ける。
 楡 長い視野に立てば、電力使用量を大幅に抑える対策として、倉庫の冷却効率を高める断熱工事や新型冷凍機の導入などが考えられます。こうした整備は財政支援を是非お願いしたい。短期間の設備リニューアルでは間に合わないため、今の課題にどう対処したらいいのか。非常な難問です。

(にれ・としひで)ニチレイ低温物流カンパニー、東京団地冷蔵のトップを経て、昨年から現職専任。日本冷蔵倉庫協会副会長も兼務。東京出身、慶大卒。64歳

フードエンジニアリングタイムス 2011年4月6日号掲載