コーヒーマシンやアイスクリーム製造機だけでなく、加工場向けの食品機械を幅広く提案するエフ・エム・アイ。1台何役もこなすミキサー「ロボ・クープ」は活躍の場を広げている。この機械名を冠した調理言葉を日本にも「流行らせたい」と木本社長は目を輝かせる。
木本社長
――ホテルやレストラン向けのコーヒーマシンやアイスクリーム製造機で知られるが、加工場向けの機器の拡販にも力を注いでいる。
木本 業務用バーチカルミキサー「ロボ・クープ」の大型機は加工場で受け入れられています。食材の粉砕からすり身・ペーストまで、様々な下準備を瞬時に行なうもの。水産関係では、今まで捨てていた魚の端材を粉砕し、食品に加工しようとする沿岸部のユーザーに導入が増えています。
もともとはフランス料理のスープを作るものが発端となっているのですが、ロボ・クープを使えば粉々にも、ドロドロにもできます。これ1台でムースもできますし、マヨネーズも作れるわけです。
――特徴のある撹拌機として、調理には欠かせない。
木本 切り刃はフランスの著名刃物メーカーであるサバティエール社との提携によって作られており、切れ味の良さには定評があります。特徴的な“S字形状”の刃は底すれすれまで撹拌できるローブレードです。この刃が様々なものを高速にカットし、しかも均一に混ぜていくことができます。水分を加えれば、さらにドロドロに仕上げることができます。
――「ブリクサー」というものもあるが。
木本 水分量の多いものを撹拌してペースト状にしたいときに使うのが「ブリクサー」。これも「ロボ・クープ」ミキサーから派生して開発したものです。この機械名は「ブレンダー」と「ミキサー」を組み合わせた造語です。水分を多く入れても、よく混ぜられるというのが大きな特徴。水分が多いと通常のフードプロセッサーではうまく混ざらないケースがあります。しかし、ブリクサーはそれを克服できます。ブレンダーとミキサーの特長を併せ持ち、品質の高い流動食を衛生的に、短時間で仕上げることができます。
――以前取材した惣菜工場では、このブリクサーを高齢者向けのスープに活用し、重宝していた。しかも、メンテナンスがしっかりしていると大変喜んでいた。
木本 ロボ・クープが誕生したのが50年ほど前。当社がそれを日本に輸入し始めたのが38年前です。そこから派生してブリクサーが誕生したのが15年前ですから、長い食品機械の歴史の中でも比較的新しい機械だと言えますね。
今のところ、ブリクサーはあまり似たようなものが出てきていないようです。欧州では2、3社メーカーがありますが、日本には入ってきていません。したがって他社とバッティングすることなく、当社の強みを発揮できます。メンテナンスというのもそこを評価していただいたのでしょう。
――ロボ・クープも、ブリクサーもよく普及している。
木本 ちなみに「ロボ・クープ」という言葉は英国の辞典にも普通名詞として記載されているんです。「ロボ・クープする」で“混ぜる”という意味で、料理の専門用語になっています。欧州ではそれだけ定着しているということですね。
――「ロボ・クープする」というこの言葉、日本でも定着している?
木本 残念ながら、まだ定着していません。しかし、この言葉を日本に流行らせるのは面白いかもしれませんね。「パコタイズする」(=食材を凍らせたまま粉砕する)は「パコジェット」を製造する機械メーカーが定着させました。
また、小型・家庭用のミキサー「クイジナート」はアメリカで爆発的にヒットしました。家庭用となるとクイジナートのほうが名が知られており、当社では敵わないところがありました。しかし、業務用のミキサーとなると当社の出番。私たちが率先して「ロボ・クープする」という言葉を、誰もが使うように業界に定着させたいですね。
――主力機械の名前が調理用語として定着すれば、食品機械メーカー冥利に尽きる。夢がますます膨らむ。
木本 そうなると嬉しいですね。今後もコーヒーマシンやアイスクリーム製造機という基幹事業をぶれずに展開していきます。それとともに、ロボ・クープやブリクサーのように加工場向けの機器の提案も引き続き注力します。
しかし、それに留まらず、欧州の新しい機械、珍しい機械をどんどん日本のユーザーに紹介する手を弛めません。今はハックマン社というフィンランドの機械メーカーが手がける「コンビ・ケトル」に注目しています。加熱温度や時間、ミキシングスピードを調整でき、自動ホールディング機能で調理後も70℃の温度維持ができます。加熱調理を終えたら、給水ホースをケトルのバルブに接続することで食材を移し変えることなく一次冷却できます。大量のソースやスープなどを効率よく生産できる、なかなか面白い機械ですよ。