ヤマダエンジニアリングは、使わない機能を省いてコストを抑え、シンプルにまとめた韓国製の包装機を売り出している。新しく始めた連続式のカップシール機は液こぼれを解消することで、豆腐業界などから引き合いを高めている。朴氏は包装機械事業の責任者。「シンプルだが、技術の注力は怠らない」と語る。
朴 正洙 氏
――横ピロー包装機やボトル供給機、計数充填機などの包装機を幅広く手がけている。
朴 会社の設立は20年ほど前になりますが、もともとは電設事業がメインでプラントの電気設備工事をサポートしていました。私も設立メンバーとして参加しましたが、当初は包装機を扱っていませんでした。
――どういったきっかけで包装機を?
朴 10年ほど前、韓国の先輩や仲間から「日本のジャパンパック(包装機械展)に出展したいから手伝ってほしい」と声をかけられたのがきっかけです。私は日本に来て当社に携わる前、韓国の大学で機械工学や設計を学び、卒業後は韓国の包装機メーカーに就職していました。包装機自体の知識や周辺事情は理解しています。大学や韓国のメーカー時代の先輩や仲間から、日本進出の際に声がかかってきたわけです。以来、10社ほどある韓国の協力工場で作った包装機械を日本のユーザーに売り出しています。
――朴さんが来日した当初は、現在ほど留学が盛んなときではなかったと思う。日本と韓国で違いを感じたことは?
朴 90年代前半、当時から日本の設計の質は高かったですね。しかし韓国では設計はパソコンでやっていました。大学で学ぶ時からパソコンが普及しており、その点では日本より進んでいたように思います。
――そのような事情から、御社でも包装機械、食品機械事業を10年ほど前から本格化させてきた。朴さんはこの事業の責任者として牽引してきた。
朴 韓国製の包装機械を日本に紹介した当時から、性能がそこそこあり、値段が日本製より安いということから、ユーザーは気にかけてくれました。「何とかうまくできないか」と相談を持ちかけてもくれています。
運が良かったのは、ジャパンパックで江崎グリコの担当者と接点を持てたことであり、グループの工場に横ピロー包装機やケース機などを一連のラインに収めることができました。ほかにも、OEMで大手製菓メーカーの包装工程のみを担当している会社にも採用となり、このような導入実績を伝えられることは他のユーザーにアピールする際に強みとなっています。
――カップシール機も手がけているが。
朴 自動連続式カップシール機は当社にとって新しい事業です。昨年のジャパンパックと今年のFOOMAで日本のユーザーに初披露しました。協力メーカーのILHEUNG社製の機械で、韓国では以前から売り出しています。リテナーの連続動作により間欠式よりも生産能力が高いのが強みです。また、リテナーが連続で流れることにより充填液がこぼれないよう配慮しています。
一方、半自動ロータリーカップシール機は最小スペースを目的としてコンパクトに設計しています。容器フタよりも包材コストが大幅に割安となります。フィルムシールなので、こちらも液こぼれがありません。
韓国では、これらは豆腐の包装に好まれており、多くの実績を数えています。日本で出品した展示会でも豆腐業界の方々に関心を持っていただきました。
――間欠式だと停止動作があるので、豆腐の汁などこぼれる懸念があったわけだ。連続式はこの点を解消できる。しかも、時間当たりの生産能力がアップしている。
朴 連続式は日本になかったわけではありません。しかし、値が高くなるのが現状。カップシール機に限らず、どの包装機械、食品機械でも同じ性能だと韓国製は30%ほど安く済み、コスト的には優位です。円高の影響もあり、この側面でもユーザーにとって都合がよいものとなっています。日韓間で機種の性能に大差はありません。
また、日本の機械メーカーはオプションをつけて高く売り込むという傾向があるように思います。付加価値の高いものを売る傾向ですね。しかし、そのオプションには年に1回使うか使わないか、あるいは10年、20年経っても1回も使わない機能さえあります。
ユーザーからは「使わない機能を省いてくれないか」という声をいただきます。大手の機械メーカーにはそこに応じられないところもありましたが、私たちはそこにうまく対応し、信頼を築くことに努めました。
――そこが御社の強みだ。
朴 使わないものは省き、値段を極力抑え、ニーズに合った機械。“ユーザーの要望はシンプル”です。しかし、機械はシンプルといっても、それに応えるには高度な技術が必要です。技術を怠るというわけではありません。ユーザーの細かな要求には、私が設計して韓国の協力工場に指示を出し、最良のものを提案します。私たちの強みを前面に押し出し、韓国製の機械の導入にあと一歩迷っているユーザーに働きかけ、壁を乗り越えていきたいと考えています。