新社名「ＡＳＰｉＡ」へ
東京医科歯科大学・宮崎大学と共同研究も
新社名ロゴとシンボルマーク
厨房関連機器メーカーの笹原商事が８月１日付けで新社名「株式会社ＡＳＰｉＡ（アスピア）」（鹿児島市、笹原憲久社長）に変更した。
創業からわずか５年、自社製品の採用が大手企業に広がり、関連会社を含めた売上げは10億円を超えるまでに成長した。さらに今年に入って東京医科歯科大学・宮崎大学との共同研究が始まったほか、中東ドバイを拠点に新たなビジネスも動き出した。社名変更には個人商店から脱し、世界を相手に挑戦するという強い覚悟が見て取れる。笹原社長は「今年はチャレンジの年。グローバル展開に向けて一歩踏み出す」と意気込む。
メーカーの立ち位置を明確に
笹原社長
�螢▲好團△料或函∈�原商事は業務用の食品卸会社から独立した笹原憲久社長（48歳）が2016年に立ち上げた。
創業当初こそ厨房器具の卸販売を手がけていたが、業務用の食用油ろ過機の開発を皮切りに、新素材の化学繊維「マジックファイバー」を使ったグリストラップ（油水分離槽）用の油吸着材や浄化剤、廃油装置、オートリフターなど、オリジナルブランド「ＥＣＯＳＡＳ」商品を相次いで市場に投入してきた。
大手外食チェーンやＪＡ全農グループ、地域の有力スーパーなどに採用が広がり、取引先の３割を上場企業が占める。売上げ構成では自社製品が７割に上る。メーカーとしての実力を備えたのは明らかで、社名変更にはメーカーのイメージを打ち出すとともに、ブランド力をもう一段高めるねらいがある。
笹原社長は「従業員が増え、会社の発展のために頑張ってくれている。一緒にステップアップするきっかけにしたい」と語る。
新型コロナ不活化効果を確認
「ＣＥＲＡＳ Ａｇ+ＣＯＯＬ
銀イオン水」は容量100mlの
ほか業務用500ml、噴霧用20Ｌ、
ペット用がある
アスピアは今年、国立大学法人東京医科歯科大学、宮崎大学と共同研究を開始した。産学連携の起点となったのが、昨年開発した除菌・抗菌・消臭スプレーの「ＥＣＯＳＡＳ Ａｇ+ ＣＯＯＬ銀イオン水」。最近では家電量販大手のヤマダ電機に採用されるなど、１年間で12万本を売り上げるヒット商品となっている。この「ＣＯＯＬ銀イオン水」が新型コロナウイルスに対して不活性化効果を持つことが、東京医科歯科大学、宮崎大学との共同研究で昨年確認された。
試験は東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の麻生義則教授（分子生命医学講座）が、新型コロナウイルス株を持つ宮崎大学農学部獣医学科の山田健太郎准教授（獣医公衆衛生学講座）に依頼した。
麻生教授らはＥＣＯＳＡＳ銀イオン水による新型コロナの不活性化効果だけでなく、あらかじめ素材表面にＥＣＯＳＡＳ銀イオン水を塗布することによる抗菌効果、マウスを使った安全性の検証も同時に行った。その結果、すべての効果と安全性が確認できた。麻生教授は６月に京都で開催された日本抗加齢医学会で研究成果を発表した。
麻生教授は「ＥＣＯＳＡＳ銀イオン水は毒性が低く、コロナウイルスを標的とした環境整備に有用である」と評価する。
「ＣＯＯＬ銀イオン水」は社名変更に合わせて商品名を「ＣＥＲＡＳ（セラス）」に変え、商品パッケージも刷新する。商品名はラテン語で「桜」を意味する「ＣＥＲＡＳＵＳ ＦＬＯＲＥＳ」から取った。桜は日本の国花であり、海外マーケットではメイドインジャパンのイメージを強く打ち出せる。また、アスピアが本社を置く鹿児島県には桜島がある。「商品名には郷土の誇りでもある桜島への敬愛の念も込めている」（笹原社長）という。
ＥＣＯＳＡＳ銀イオン水による不活性化効果の検証結果
商品パッケージには東京医科歯科大学、宮崎大学との「共同研究」を前面に表示し、エビデンスレベルの高さを訴求する。
産学連携をさらに推し進めるため、東京医科歯科大学とジョイントリサーチ契約を交わし、共同研究をこのほど開始した。ナノファイバー（超極細繊維）技術を使った新素材「マジックファイバー」を軟骨再生医療に応用を試みるほか、医療製品（血液吸着材等）の開発に取り組む。宮崎大学とは農業分野で共同研究を行う。
ドバイに合弁会社、万博に出展決定
アラブ首長国連邦（ＵＡＥ）のドバイを拠点とした新事業が間もなく本格始動する。ロイヤルファミリーとつながりのある現地パートナー企業と合弁会社をこのほど立ち上げた。「マジックファイバー」の技術を軸に油吸着材の生産から吸音材、断熱材の開発、農業、医療分野へと広げ、中東・アフリカで展開する構想を描く。農業分野では砂漠を緑地化するプロジェクトをドバイ政府と進める。
さらに、新型コロナ対策商品として「ＣＥＲＡＳ」を現地で製造することが正式に決まった。工場をドバイに建設する。
ドバイの現地パートナーと合弁会社を立ち上げた
脱石油依存をめざす現地の期待は大きく、それを示すのがコロナ禍で開催が１年延期した「ドバイ国際博覧会」（2021年10月１日〜2022年３月31日）での待遇だろう。ふつう日本企業は経済産業省が幹事を務める日本館に出展するが、アスピアはドバイ政府が管轄する会場の提供を受ける。2021年12月２〜４日の３日間、約2500坪の広大なスペースに自社製品のほか、メイドインジャパンの幹細胞コスメやアニメ関連商品なども展示する。ドバイ政府からの信頼の厚さがうかがえる。
笹原社長は「我々は中東で単に製品開発や販売を手がけるのではなく、中東に技術革新をもたらし、独自産業を根付かせ、いずれ産業革命を起こすことをめざす」と語る。
ドバイ政府の万博パビリオン、アスピアの現地の合弁会社が使用する
国内の食品卸も堅調
アスピアは日本国内では業務用食材卸の食品事業も手がけており、鹿児島県、長崎県へと販売エリアを順調に広げている。鹿児島本社の野元慎一食品事業部本部長を中心に営業を強化し、大手のホテルや外食店、産業給食、病院、通販会社などを開拓し、コロナ禍でも売上げは２億円を突破している。
笹原社長は「さらなるエリア拡大を視野に食品事業部の強化を確実に図る。新社屋も計画しており、地域ナンバーワンをめざす」と意気込みを語る。