AIでマグロを目利き

    スマホでマグロの品質を判定する

 電通電通国際情報サービス(ISID)のオープンイノベーションラボは、後継者不足が深刻なマグロ目利き技能を継承するためのAIシステム「TUNA SCOPE™」を開発した。天然マグロの尾部断面画像からAIが品質を判定する。現在、実証実験を行っている。
 このほどスタートした「プロジェクト匠テック」の一環。少子高齢化などの社会構造の変化を背景に、熟練の職人が持つ技能継承が課題となっている様々な産業で、その技能を人工知能(AI)などの技術を活用して継承する。
 膨大な教師データの収集、ディープラーニングを活用した画像解析技術の適用で、AIが職人の暗黙知を独自に解釈し、貴重な職能を後世へ残す。
 日本のあらゆる伝統産業で培われてきた職人の技は、人類の貴重な知識資源として位置づけられる。しかし、これらのノウハウは「職人の勘」と形容されるように、体系化や言語化がされにくく、担い手職人が高齢化の一途をたどる中、存続が危ぶまれている。

「尾切り検品」のデータを機械が学習

 今回は、従業者の高齢化が深刻な課題となっている水産業界で、一人前になるまで10年は必要といわれるマグロ仲買人の「目利き」のノウハウに着目。マグロの尾部断面の目視により品質判定を行う「尾切り検品」と呼ばれる職人技から得た膨大なデータを機械学習で継承したAIシステム「TUNA SCOPE™」を開発した。
 開発にあたり、マグロの尾部断面写真と、職人の4〜5段階の品質評価の結果を紐づけて尾切り検品のデータを取得。画像解析を行うためのシステムを構築した。
 これをマルミフーズ焼津工場(静岡県)での検品業務で試験運用した結果、職人と85%の一致度でマグロの品質判定に成功した。
 「TUNA SCOPE™」の運用で最高ランクと判定されたマグロを「AIマグロ」とし、商品ブランドロゴを開発。「産直グルメ回転ずし函太郎Tokyo」で5日間にわたって約1000皿を販売した。アンケートの結果、注文客の9割から「AIマグロ」に対する高い満足度を示す回答が得られた。