乳業工場向けの搬送ライン納入、展開広げる

 ワイヤーベルトの専門メーカー、ケイズベルテックは乳業工場向けに搬送ラインを受注、このほど納入した。冷凍食品など加工食品向けの搬送システムに多くの実績がある同社だが、飲料向けの本格納入は今回が初。現在は酒造工場とも開発を協議しており、これを機に飲料工場に自社製品を拡販する姿勢を示している。

      里薗社長

 今回手がけたのは、ある乳業メーカーが工場全般を改修し、加工乳など製品を増産するために拡張したライン。1リットルパックやブリックパックに充てん後、既存のコンベアが検査機器を通り、インクジェットプリンタによる印字を経て、各出荷準備室へ搬送するラインなどを担当した。
 印字後、出荷先によって1リットルパックやブリックパックをプラスチックケースに対象本数入れるもの、あるいはシュリンクで束ねるものなど形態は様々。出荷準備室には既存の1本のラインから各形態の複数ラインに振り分けるが、異なるコンベヤに移載するため、この箇所のシステム完成化に苦労があったという。
 「異なるコンベヤへの移載は、初めから同時に作ったラインであれば、異なるベルト同士の隙間をなくして各機械の入口部までスムーズに搬送できます。しかし、今回は商品形態を拡張し、それを振り分けるライン。既存の1本のラインから、カートンシーラーやケーサー、シュリンカーなど各機械とベルトを連結させなければなりません。ここがうまくいかなければ、1リットルパックなど重心の高い製品は転倒してしまうこともしばしば」と里薗勝成社長は完成までの苦労を打ち明ける。

前後の装置を熟知しなければならない

 この“振り分ける”工程こそ、同社が得意とするところ。
 同社はハム・ソーや製菓・製パン、水産加工品など多くのメーカーと取り引きがある。中でも一番の実績を誇るのが冷凍食品メーカー。ハンバーグやコロッケ、餃子、グラタン、ピッツァ、麺など担当してきた食材は種類を選ばないほど。
 冷凍食品と言えば、装置産業。成形機、パン粉付け機、フライヤー、フリーザー、包装機、検査装置などで構成しており、それぞれの機械メーカーの特性を持った単独の装置を、同社が手がけるようなベルトシステムによって繋がり、一連のラインとなっている。冷凍食品はそれぞれの装置の投入・搬出条件に合わせ、整列や配列、乗り移り、振り分けなどを経て製品化されている。
 「当社は各食品機械メーカーと厳密に打ち合わせし、各装置と連結するコンベアのほか、整列・配列・分配・縮小・分散・集合など様々な機能を持たせた装置を設計、製作します。そのためベルトを製造するだけでなく、ラインのシステムを熟知していなければなりません」(里薗社長)。
 前後の装置を熟知している、あるいは熟知していかなければならない経験と姿勢が、同社にとって未開である乳業はじめ飲料工場にも活かされているのは間違いない。
 「乳業工場の搬送ラインには、“ユニバーサルチェーン”という若干特殊なベルトを使用しているケースが多い。当社も扱っていないわけではないが、今までは敢えて踏み込んではいませんでした。今回、乳業工場に携わり、大変勉強になりました。自信にも繋がりました。これを機会に新たな業界に当社製品をアピールできれば」と里薗社長。
 さらに、この経験がベルトとは全く違った装置の開発にもヒラメキがあったという。これは飲料だけではなく、食品工場全般に活かされる見込み。現在、実現化に向けて構想を練っているところ。「来年のFOOMAで披露することができれば」と里薗社長は語っている。

 フードエンジニアリングタイムス(FEN)2014年11月5日号掲載