ネクトンLLP、電解殺菌冷海水装置を導入

 日東製網網代漁業(静岡県熱海市)と定置網漁業の漁獲物をみずから全国に販売するネクトンLLPを昨年2月に設立している。08年度の水産庁ビジネス・プラン2次補正予算に応募し、定置網用鮮魚選別装置が採用されたのに続き、09年度には電解殺菌冷海水装置(三冷社製)が採用され、10月から漁獲物の鮮度保持に効果を発揮している。

日東製網が業務支援で流通構造改革支援

 日東製網は顧客である定置網漁業の漁獲物の価格が低迷し、漁業経営が苦しんでいたことから、3年前より定置網漁業の運営と水産物の販売で経験のある専門の社員を各定置漁業会社にアドバイザーとして、派遣支援する業務を行っている。これらの支援業務をこれまでに6か所の定置網で行っている。網代漁業にはネクトンLLPを昨年2月に立ち上げて支援業務を行っている。
 網代漁業は定置網の漁獲物を、これまで産地市場である網代魚市場(網代漁協)に上場していたが、地元の水産物の需要が少ないことから、魚価は近隣の定置網の漁獲物と比べ半分以下であった。そこでネクトンLLPは漁獲物の流通構造改革を抜本的に改革した。これは市場に上場する最低価格を定め、これに達しない漁獲物はみずから販売するというビジネス・モデルを実行した。このため、ネクトンLLPは積極的に販路の開拓を全国に行っている。この結果、漁獲物の半分以上を産地市場以外に販売するようになり、網代漁業の収入が増加している。市場の口銭は4%だが、市場外に直接販売しても漁協(市場)に2%の口銭が支払われる。

網代漁業、熱海沖に2つ目の定置を設置

 一方、網代漁業はこれまで網代沖に設置された古網漁場に加え、昨年10月から熱海沖の伊豆山漁場に2つ目の定置網を設置している。これに20名の従業員が従事し、これまで1ケ統は、年間1100t水揚している。漁獲物はゴマサバやアジ、イワシ、イナダ、マダイ、スズキなどだ。今年11月の決算では売上高が2億数千万円で収支も黒字となっている。さらに来期は2ケ統となったことから、漁獲物も1.5倍となり、売上げも同様に増えると予想している。
 これに加え、定置網用鮮魚選別装置により、これまで手作業で4時間かかっていた選別作業は1時間となり、従業員の作業が軽減化されたほか、出荷までの時間が大幅短縮され、より鮮度を保持する。さらに今年度導入した電解殺菌冷海水装置により、選別時にかけ流したり、箱詰では氷と一緒に電解殺菌冷海水を加え、漁獲物の鮮度保持に効果を発揮している。
 支援業務を担当している日東製網の社員で、ネクトンLLPおさかな網代港・職務担当の松尾浩司氏 は「これまで20件近くの定置網漁業を見ているが、いずれも漁獲物である鮮魚の品質管理の扱いが不十分だった。私が10年間勤めた三重県漁連では、氷の使い方や箱詰め作業がうまく、これを手本として各定置網の漁獲物の販売で成果を挙げ、漁業者の収入をアップさせている。魚種選別機に続き、今回、冷海水殺菌装置が導入されたことで、鮮度保持など品質向上に役立っている」と語っている。

ネクトンLLPに導入した電解殺菌冷海水装置