“手荷物検査”の技術が食品工場に
イシダ X線異物検出装置IX−G2−2476/4076
 (Japan Pack Awards2011 日本国際包装機械展実行委員長賞 受賞機種)

 イシダが開発したデュアルエナジーセンサー搭載のX線異物検出装置「IX−G2−2476/4076」は、従来のシングルセンサー搭載では困難だった異物の検出に成功している。実はこのセンサー、食品業界が永らく待ち望んでいた技術を応用したものなのだが・・・。

   IX−G2−4076

 「デュアルエナジーセンサーはもともと空港の手荷物検査に使われている技術。X線装置のセンサーとしては目新しいものではありません」と語るのは、東日本産機システム部広域市場開発課の田中健一朗係長。主に東日本地域の食品メーカーなどを担当する、ユーザーと接する最前線の部隊の1人だ。「しかし、このセンサー技術は従来、食品業界向けではありませんでした」と続ける。
 デュアルエナジーセンサーは1回の撮影でX線エネルギー値の違う2つの画像を取得。この2つの画像を特別な処理で合成することで、食品が重なり合っている部分や撮影画像の輝度が濃い部分の影響を抑えることができ、検出感度は大幅に向上する。シングルエナジータイプのセンサーでは検出できなかった異物も検出できるようになった。
 冷凍食品の袋詰めなど重なりやすい商品でも高精度に異物を検出する。特に骨など金属に比べて密度が低い異物検査に、従来以上の威力を発揮する。
 食品業界にとって、この“待ちに待った”センサー技術。従来からあるにもかかわらず、なぜ今まで応用されなかったのか――。「手荷物検査は対象物をゆっくり流して検査できます。よく見えなかったら、もう一度戻して検査することもできます。しかし、食品工場のラインではそうはいきません」(田中係長)。1分間に60個、あるいはそれ以上の対象物が流れる食品工場の搬送ラインには、そう簡単に応用するわけにはいかなかったようだ。画像処理に時間がかかっていたものをどこまで短縮できるか――。開発担当者はこの改良に苦労を重ねたという。

村上課長(右)と田中係長

 「“デュアル”はかねてから食品業界向けに応用したかった技術。しかし、そこにはコストやスピード処理など、開発の上の課題や壁がありました。数年前から開発に着手し、2010年秋ようやく完成し、業界に先駆けて発表することができました」(産機・統括営業企画管理部企画開発課 村上正彦課長)。
 この大きな“壁”に挑戦したのは、「ユーザーが待ち望んでいた技術だから」と2人は口をそろえる。
 実際、2010年秋に発表し、昨年春に製品化して以来、ユーザーの関心を確実に掴んでいる。クセのある骨の検出に悩まされている畜産加工メーカーのほか、従来それほどX線異物検出機の導入が進んでいなかった菓子業界からも「設備投資に見合う成果が見込めるのならば、導入を検討したい」と引き合いがあるという。

 同社の開発センターがある滋賀事業所には、「テストをさせてもらいたい」と申し出るユーザーが昨年は特に多かった。震災の影響で商談の流れは変わってしまったが、こういう時期だからこそ、「今後どう進もう」と真剣に考えるユーザーが滋賀を訪れている。
 競合メーカーも昨年春、デュアルエナジーセンサーを搭載したX線異物検出装置を発表した。「私たちも昨年のFOOMAやJAPAN PACKでプレゼンに力を入れたため、“デュアルエナジーセンサー”という言葉が今後のキーワードとして、食品業界に根付かせることができたはず。それが昨年の狙いの1つでした。いよいよ今年からは本格的に食品工場への導入が進むでしょう。当社の代表機種の1つとして育てあげます」(村上課長)と夢を膨らませる。