活躍の場広げる真空包装機
東京食品機械 代表取締役社長 秦 哲志氏 (上)

 ドイツのMULTIVAC社真空ガス包装機を国内販売している東京食品機械。畜肉のハム・ソーセージ用の包装機の領域を超え、水産物など様々な食品に用途が広がっている。「食品の真空包装化率はまだまだ高まる」と秦社長。小型機の登場もその勢いを後押ししている。

       秦社長

 ――深絞り包装機は小型タイプの人気が高まっている。
 秦 小型タイプは3機種、MULTIVAC「R095」、「R105」、「R145」を2年ほど前から投入しています。中でも、能力の高い「R145」は多くのユーザーから好評を得ています。

 ――用途は?
 秦 切り身生魚のコンシューマーパックや、湯煎・レンジで温めるだけですぐに食べられる煮魚や焼き魚などを包装します。使い勝手のいい加工品の真空パック形態が市場に受け入れられています。このようなコンシューマー形態の変化は、大手スーパーやコンビニエンスストアでも引き続き増えていくことでしょう。加工場では、小型機で小回りがきき、1人分や2人分のような少量パックでも生産能力を発揮する機種が必要とされています。深絞り包装機のスタンダード機種である「R245」が一昨年までは一番売れていたのですが、昨年「R145」が逆転しました。

 ――小型機の強みを発揮している。
 秦 サケフィレやブリフィレ用の業務用パックの既存ラインでも、1ラインで今までの倍の生産能力を持ち、全体的な生産コストを下げることで競争に勝ち抜いていこうと大型機と入れ替え購入いただいたユーザーもいます。将来を見越した投資意欲が感じられます。

 ――水産関係のユーザーも増えているようだ。
 秦 以前は食肉加工向けがメインでしたが、今では食肉と水産が半々ですね。それだけ、今まで水産物を密閉包装する加工率が低くかったということです。この数年で漬け魚や煮魚、焼き魚など加工した魚を中心に包装化率が上がりました。中には干物を密閉包装しているケースもあります。魚を密閉すれば日持ちは長くなります。

 ――鮮度保持はもちろん、家庭では湯煎ですぐに食べられるという便利さもある。真空パックは追い風になっている。
 秦 流れは来ていますが、まだまだこれから。スーパーマーケットの売場全体を見てみても、私たちのような包装機械で真空パックしているのは、ハム・ソーと、蒲鉾のごく一部、チーズ、卵焼き、油揚げくらいです。野菜はゼロ、生肉は9割以上が依然としてラップ包装、魚もそれぐらいです。

 ――だからこそ、普及しがいがある。
 秦 この時代の流れを味方にして、どんどん提案していきたいですね。インターネット注文による通販が盛んになっていますが、ここでも菌を繁殖させず、鮮度を保持するような真空パックやガスパックが欠かせなくなります。他の商品と梱包する際の液漏れの心配も解消しなければなりません。
 人口が減るということは以前から言われていること。しかし、単身者が増え、世帯数は増え続けています。そうなることはわかっていましたから、個包装や使い切り包装をだいぶ以前から薦めてきました。しらたきのツインパックも売られるようになりましたが、この形態も私たちが以前から提案してきたものです。個包装や使い切り包装。これもトレンドですね。

 ――FOOMAが終わったが、振り返ってみて。
 秦 昨年よりも多くの方にブースを訪問していただきました。食肉や水産関係をはじめ、菓子メーカーやパンメーカーなど幅広い方に最新の機械を見ていただきました。中でもベンダーの関係者は元気がありますね。ファミレスのセントラルキッチン向けに機械を探しているという方もいました。

 ――ベンダーや外食のセントラルキッチン。どれも勢いがあるところだ。
 秦 ファミレス関係では、一部のユーザーとは長くお付き合いしていますが、ここ最近取り引きを始めたユーザーがほとんどです。機械化したいという投資意欲を強く感じます。その要望に応じられるよう磨きをかけていきます。 (次号へ続く)

 フードエンジニアリングタイムス(FEN)2013年7月3日号掲載