“ロングセラー”の後継機
大和製衡 「組合せ計量機 データウェイΩシリーズ」
(Japan Pack Awards2011 日本国際包装機械展実行委員長賞 受賞機種)

 大和製衡が昨年開発した組合せ計量機「データウェイΩシリーズ」は全世界でトップクラスの販売実績を挙げた「Σシリーズ」の後継機。新理論と新技術、17年ぶりのフルモデルチェンジに秘めたストーリーとは・・・。

   データウェイΩシリーズ

 「前機種は長寿命でした。細かな改良はありましたが、基本的なメカニックの構図に変更はありませんでした。それだけ当時開発したものは完成度が高く、ユーザーに受け入れられたということでしょう」と自動機器事業部の小笠原和行副事業部長は説明する。
 1992年の発表以来、「年間1000台規模で導入が続いた」というほど、着実に実績を伸ばしてきた前機種「データウェイΣシリーズ」。スナックや米菓、キャンディ、シリアルなど、日本だけでなく世界の食品工場で活躍の場を広げてきた。
 しかし、「私たちはその限界もよく理解していました」と語る小笠原副事業部長。組合せ計量機本体の品質を上げ、今まで以上にユーザーの生産性向上に貢献しなければならないと感じていた。わずかに残されている「ムダ・ムラ」根絶への挑戦。今後もこの“ロングセラー”に頼り続けるわけにはいかなかった。

新機種に搭載した“理論”

 新機種開発のコンセプトは「ユーザーの計量包装ラインの生産性を上げる」。計量機自体の精度を高めることはもちろんだが、それだけでは限界がある。計量機は包装機の能力を最大化するための供給機と位置づけ、“包装機が最大限に仕事をしやすくする”ことがライン全体の生産性を上げるということをねらった。
 「包装機の能力を最大限に引き出すために、我々計量機側としては“独立排出経路”と“下基準”という考え方をコンセプトとしました。単純に高速化するのではなく、確実な包装シールのために十分な“プロダクト・ウィンドウ”を確保することです」(同)。
 “プロダクト・ウィンドウ”とは商品と商品の間隔のこと。これを広く確保することで、受け入れ側となる包装機は従来よりも仕事(包装)がしやすくなる。この間隔を生み出すために、計量機は従来のシュートを独立した二重構造の排出経路に変えることで、高速運転でも計量ホッパーから排出できる。
 また、“下基準”とは、集合シュートを通って落ちた商品を集合ゲートで一時的に保持し、固まり状態で包装機に供給すること。これも、受け入れ側の包装機が仕事をしやすいように編み出した考え方。これにより、包装機のシール部での噛み込み不良などの包装ロスを軽減できる。

スナックの計量では、塩やこしょうが包装機の
シール部に噛み込むなど改善すべき点があった。
少しでも不良品率を減らすよう手立てを加えた。

 すでに出荷が始まったΩシリーズ。海外で導入が先行していたが、国内でも菓子用途に限らず、水産や冷食メーカー、伸張しているカット野菜メーカーへの導入が決まっている。既存のユーザーよりも、新規のユーザーから引き合いが多いという。
 「これから本腰を入れて取り組むのは、独立排出経路や下基準など、私たちが辿り着いた“理論”を正確にユーザーに伝えていくことでしょう。そうでなければ、“Ω”の能力を最大限に引き出せません。そのためにも、十分な説明ができるよう、当社のセールス部隊のレベルアップも必要となってきます」(同)と気を引き締める。
 理論を形にするため、エンジニアは個体が持つ“振動数”を綿密に計算し、計量機のホッパー部に技術を注力した。そもそも、その緻密な努力がなければ、正確な計量と供給は生まれてこなかったはず。それがセールス部隊に引き継がれ、“提案力”によってユーザーの関心を引き付けようとしている。“ロングセラー”を引き継いだ“Ω”のスタートは始まったばかりだ。

 フードエンジニアリングタイムス(FEN)2012年1月4日号掲載