ハンバーグラインを刷新、付加価値タイプの工場に
ヤヨイサンフーズ長岡工場 工場長 目黒文夫氏

 ヤヨイサンフーズは昨年9月中旬、長岡工場(新潟県長岡市)のハンバーグラインを全面的に刷新した。ヤヨイサンフーズは2014年4月にヤヨイ食品とニチロサンフーズが合併して発足し、ニチロサンフーズはヤヨイサンフーズ長岡工場となったが、旧ハンバーグラインは成形後にネットコンベアで焼成していたため、柔らかい生地の製品を焼き上げるには不向きだった。
 今回、焼成ラインを入れ替えたことにより旧2社の商品のいずれも生産できるようになった。
 しかし、設備刷新の目的は、むしろ品質の向上にある。
 「一番は圧倒的にジューシー感があるハンバーグを作ること。他社と違う商品を作ることが目的」と目黒文夫工場長は強調する。

      目黒工場長

 ――旧2社のハンバーグのいずれも長岡工場で作ることができるようになった。
 目黒 互換性の点では(旧ヤヨイ食品九州工場だった)九州工場などと同じく柔らかい生地のハンバーグを当工場でも作ることができるようになった。しかし、設備投資の目的は互換性だけではなく、これまで以上に付加価値をつけること。
 ――具体的には?
 目黒 1つは「従来にないこんがりとした焼き目」。旧ラインは成形後にシュバンクバーナー(赤外線で加熱するハイカロリーバーナー)で焼き目をつけ、その後に蒸しラインで仕上げていたが、新ラインは一次焼成、蒸し工程、二次焼成(シュバンクバーナー)の3段階工程を採用した。めざしたのはフライパンで焼いた様なおいしそうな焼き色。それが実現できた。
 ――焼き色が良くなった以外には?
 目黒 2つ目のポイントは「肉感とジューシー感」。一次焼成では150〜200度Cの過熱蒸気で加熱する。鉄板に触れていない上面やサイドの部分も短時間に焼き固めるため、おいしさが逃げない。その後蒸し工程に入り、さらに商品によってはシュバンクバーナーで焼き目をつける。従来はネットコンベアだったが、それを鉄板に代えて両面を焼成できるようにした。最後にシュバンク工程を持ってくることで、はっきりとした焼き色を出せるようになった。さらに、より高温で焼きあげることにより、肉が焼ける時の風味を製品に付与している。3つ目のポイントは手作り感のある形。包あん装置で手作り感のあるふっくらとした形にしている。
 ――おいしさ・風味も向上した。
 目黒 それが今春の新製品の目玉商品「グラングリル合挽きハンバーグ」などだ。今後も、当工場は付加価値タイプのハンバーグを中心に生産していく。当社の清水工場は真空パック系の商品を作る設備がない。したがって、特に、ソース付きの商品は当工場が作っていくことになる。当工場はニチロサンフーズ時代から真空パックの設備があり、焼き目付きの商品を作ることができたが、今回の新ライン設置により、真空で焼き目付きで、なおかつジューシーな商品ができるようになった。当工場ならではの商品として期待している。
 ――商品の評判はいいと聞く。
 目黒 実際に新商品をプレゼンしたところ、得意先からは肉汁があふれんばかりのジューシーさを高く評価していただいている。得意先には既存品も、品質がアップした商品に切り替えてもらっている。
 ――ハンバーグライン以外の設備更新は?
 目黒 昨年はセキュリティや交差汚染の防止、従業員の福利厚生にも力を入れた。
 1階のレイアウトの変更に伴い、品質管理室を3階に移した。検査などの作業は1階で行うが、席は3階にある。3階には営業や生産の部署もあり、同じフロアになって業務の効率化につながっている。
 ――ハード面以外では?
 目黒 人手不足は当工場も例外ではない。当工場は300アイテムを生産しているが、ある時はあるラインの従業員が多すぎたり、逆に足りなかったりする。そこで、最適な生産スケジュールを週ベースで見直すようにした。昨年は上期に時給を見直しした。下期はバスによる送迎も検討しているところ。人手不足には募集も必要だが、最も大切なことは従業員の定着だろう。そこで、環境整備にプラスしてコミュニケーションが重要だと捉え、時給の話を含め、既に2回の面談を行っている。さらに、何か困っている事や、言いたいことを受け止めるため、食堂に意見箱を設置した。昨年4月半ばから始め、11月末までに81件の意見が寄せられた。
 ――それを反映させている?
 目黒 もちろん、意見を聞くだけではなく、「これはできる」、「これはちょっと難しい」など、会社の考えも伝えている。朝礼や夕礼で「このような意見が出ている」といった話をし、工場側の考えも伝えることで、風通しを良くしている。従業員は意見をきちんと書いてくるし、不満だけでなく建設的な意見が少なくない。昨年の新入社員は11名だが、今のところ退社した人はいない。
 ――一方で、機械化や省人化も作業環境の向上も重要だ。
 目黒 12月にはキャベツの処理ラインを省力化するためにライン化している。新たに導入したハンバーグラインの連続オーブンは過熱蒸気等の新機能だけでなく、密閉化することで作業場が暑くならないようにしている。これも作業環境の向上に一役買っている。